氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
そして――出発の日。

曇り空の下、王宮の正門には父と兄、そしてわずかな見送りの者たちが並んでいた。

戦で疲弊した国の中で、私の旅立ちは静かに、しかし重く送り出されようとしていた。

「アナベル……辛かったら、いつでも帰って来い。」

父が震える声でそう言った。

かつて誰よりも厳格だった父の目に、涙が浮かんでいるのを見て、胸が締めつけられた。

「……父上」

帰れる場所があるというその言葉だけで、どれほど救われることか。

でも、私は戻ることを許されない立場になった。

もう私は、国の“駒”として歩き出すのだ。やっていけるのだろうか――この先の、愛のない生活を。

「アナベル。そなたを……誇りに思う。」

兄が静かに私を抱きしめてくれた。

その胸の温かさに、思わず涙がこぼれそうになる。

「ご安心ください。……このダリオ、命に代えても姫をお守りいたします」

そっと膝をついて誓うダリオに、私はかすかに微笑んだ。
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