氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
父は、28歳の若き皇帝に向かって深く頭を下げた。

王としての誇りを押し殺し、国を生かすために。

そして、私のことを静かに紹介する。

「……これが、ルナリエ王女。私の娘、アナベルです。」

私は一歩前へ進み、礼をとった。

だが、皇帝は私に視線を向けたのはほんの一瞬だった。

ちらりと見るだけで、感情のかけらもない表情。

私は、声もかけられず、ただ立ち尽くす。

そして彼は一言だけを残した。

「一週間後。ヴァルクレア帝国宮殿で待つ」

それだけ言い残し、玉座から立ち上がることもなく、視線を逸らした。

ああ――やはり私は、ただの“駒”なのだ。

そう胸の奥で確信しながらも、私は顔を上げ、凛と前を向いた。

これが、私の選んだ道。怯えてなどいられない。
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