氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「陛下、落ち着いて下さい!」

老臣が声をかけるも、ルシウスの怒りは収まらない。

「落ち着いていられるか……!皇后が、毒を盛られたんだぞ!」

その声には、これまで誰も聞いたことのない激情が宿っていた。

恐れられていた“冷徹皇帝”の仮面は剥がれ落ち、そこにいたのは――

たった一人の妻を守ろうとする、ひとりの男だった。

「陛下……」

私は弱々しく呼びかけた。

ルシウスはすぐに私のもとに駆け寄り、ベッドの上の私をそっと抱きしめた。

「アナベル……もう大丈夫だ。俺がいる。必ず犯人を捕まえてみせる……」

その腕は力強く、けれど震えていた。

「いいです……」

私はかすれた声で答える。

「たぶん……あの侍女は……エリザベート様の付き人です。」

ルシウスの目が鋭くなり、私を見据える。

「……確かか?」

「確証はありません。でも、薬を持ってきたとき、私を見ませんでした。」
< 56 / 62 >

この作品をシェア

pagetop