氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「俺の解毒剤を持って来い!今すぐだ!」

「は、はい!」

足音が響き、間もなく持ってこられた小瓶。

私は震える手でそれを受け取り、迷いなく飲み干した。

「はぁ、はぁ……」

胸の奥が焼けるように苦しくて、けれど薬が体に染み渡る感覚がわかった。

「もうすぐ、効く。大丈夫だ、アナベル。」

ルシウスの声が、耳元で優しく響いた。

その手が私の背を支えてくれている。

――やっぱり、この人を信じてよかった。

彼の瞳の奥に宿る怒りは、私のために燃えている。

冷徹な皇帝ではない。

私だけを守ろうとする、一人の男の――温かい眼差しだった。

「ここにいた侍女を呼べ!」

ルシウスの怒号が響き渡った。

すぐさま側近が駆け出して行くが――

「陛下!姿がありません。宮殿内、どこにも……」

「何だと⁉」

怒りに満ちた拳が、机を叩く音が鳴り響く。

「宮殿中を探せ!誰がかくまっていようと、必ず見つけ出せ!」
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