君に花を贈る
翌朝、コンビニに寄ってから瑞希の家へ向かった。
「はよー」
「はよ……なにそれ」
出迎えてくれた瑞希がコンビニ袋を指さす。
「花音ちゃんにお土産。渡しといて」
「いいけど、俺のは?」
「ないよ。それ、お詫びだから」
「……ああ、なるほど。ウケる。律儀だな、藤乃は」
中身を見た瑞希が笑って部屋に引っ込む。
すぐに戻ってきて、二人で畑に向かう。
広い畑に水をまいて、隅では肥料を混ぜたり、落ち葉を掃いたり。
途中で瑞希と別れた後も、汗だくになって身体を動かしていたら、遠くから声が聞こえた。
「須藤さーん、お昼、お持ちしましたー!」
「ありがとー」
顔を上げると花音ちゃんが手を振っている。
昨夜も今朝も会えなかったから、つい頬がゆるんだ。
手を洗って花音ちゃんのところに行くと、弁当箱と水筒が差し出された。
「母が作ったお昼です」
「ありがとう。わざわざ持ってきてくれて」
「……あと、これも良かったら」
花音ちゃんが手に下げていた、小さな袋を差し出す。保冷バッグかな?
「昨日……杏仁豆腐、おいしかったって言ってたから……」
「作ってくれたの!?」
「ちょ、声が大きいです……でも、はい。作ったので……その、よければ」
杏仁豆腐を受け取る。
すごい。嬉しい。どうしよう。
こんなことなら、コンビニのじゃなくて、もっとちゃんとした杏仁豆腐を買ってくればよかった!
朝の五時に開いてたのがコンビニしかなかったから……。
「食べます……でも、もったいなくて、まだ食べられない……」
「食べてください。そんなの、いくらでも作りますから」
「ありがとう。でも、“そんなの”って言わないで。せっかく作ってくれたんだから、大事に食べるよ」
「……私も、ありがとうございました。杏仁豆腐。買ってきてくれて」
「ううん、お詫びだし、気にしないで食べて」
花音ちゃんを見送ってから、昨日と同じベンチに向かった。
瑞希はいなかったので、先に食べていると泥だらけの瑞希がやってくる。
「……なにそれ」
「花音ちゃんが杏仁豆腐作ってきてくれたんだよ。てか、あれってそんな簡単に作れるの!?」
「昨日の夜いなかったの、それか……」
「えっ」
わざわざ、材料を買いに行ってくれたの!? 買いに行ったんなら、杏仁豆腐そのものを買ってくればいいのに、材料買ってきて作ってくれたんだ……?
「うわ……マジで……?」
空の弁当箱を脇に置いて、保冷バッグを開けると、ひんやりした容器が入っていた。
そっとフタを開けると、中で白い塊がぷるぷると揺れていた。
「……うまっ。泣きそう……」
「どんだけだよ」
「死ぬまで養います」
「杏仁豆腐一つでお前……。藤乃がキモいのは知ってたけど、まさか重さまで乗ってくるとはな。義弟になるの、マジで嫌なんだけど。鏡見てみ? すごい顔してるぞ」
「お義兄さん、悪いけど、そこの肥料撒いといてくれます?」
「うるせー!」
瑞希とバカなやり取りをしながら、杏仁豆腐をぺろりと平らげた。
瑞希の弁当箱も受け取って家に返しに行ったけど、花音ちゃんの姿はなかった。
ついでに洗面所を借りて鏡をのぞいたら、案の定、締まりのない顔でヘラヘラしてて、自分でも気持ち悪かった。
「はよー」
「はよ……なにそれ」
出迎えてくれた瑞希がコンビニ袋を指さす。
「花音ちゃんにお土産。渡しといて」
「いいけど、俺のは?」
「ないよ。それ、お詫びだから」
「……ああ、なるほど。ウケる。律儀だな、藤乃は」
中身を見た瑞希が笑って部屋に引っ込む。
すぐに戻ってきて、二人で畑に向かう。
広い畑に水をまいて、隅では肥料を混ぜたり、落ち葉を掃いたり。
途中で瑞希と別れた後も、汗だくになって身体を動かしていたら、遠くから声が聞こえた。
「須藤さーん、お昼、お持ちしましたー!」
「ありがとー」
顔を上げると花音ちゃんが手を振っている。
昨夜も今朝も会えなかったから、つい頬がゆるんだ。
手を洗って花音ちゃんのところに行くと、弁当箱と水筒が差し出された。
「母が作ったお昼です」
「ありがとう。わざわざ持ってきてくれて」
「……あと、これも良かったら」
花音ちゃんが手に下げていた、小さな袋を差し出す。保冷バッグかな?
「昨日……杏仁豆腐、おいしかったって言ってたから……」
「作ってくれたの!?」
「ちょ、声が大きいです……でも、はい。作ったので……その、よければ」
杏仁豆腐を受け取る。
すごい。嬉しい。どうしよう。
こんなことなら、コンビニのじゃなくて、もっとちゃんとした杏仁豆腐を買ってくればよかった!
朝の五時に開いてたのがコンビニしかなかったから……。
「食べます……でも、もったいなくて、まだ食べられない……」
「食べてください。そんなの、いくらでも作りますから」
「ありがとう。でも、“そんなの”って言わないで。せっかく作ってくれたんだから、大事に食べるよ」
「……私も、ありがとうございました。杏仁豆腐。買ってきてくれて」
「ううん、お詫びだし、気にしないで食べて」
花音ちゃんを見送ってから、昨日と同じベンチに向かった。
瑞希はいなかったので、先に食べていると泥だらけの瑞希がやってくる。
「……なにそれ」
「花音ちゃんが杏仁豆腐作ってきてくれたんだよ。てか、あれってそんな簡単に作れるの!?」
「昨日の夜いなかったの、それか……」
「えっ」
わざわざ、材料を買いに行ってくれたの!? 買いに行ったんなら、杏仁豆腐そのものを買ってくればいいのに、材料買ってきて作ってくれたんだ……?
「うわ……マジで……?」
空の弁当箱を脇に置いて、保冷バッグを開けると、ひんやりした容器が入っていた。
そっとフタを開けると、中で白い塊がぷるぷると揺れていた。
「……うまっ。泣きそう……」
「どんだけだよ」
「死ぬまで養います」
「杏仁豆腐一つでお前……。藤乃がキモいのは知ってたけど、まさか重さまで乗ってくるとはな。義弟になるの、マジで嫌なんだけど。鏡見てみ? すごい顔してるぞ」
「お義兄さん、悪いけど、そこの肥料撒いといてくれます?」
「うるせー!」
瑞希とバカなやり取りをしながら、杏仁豆腐をぺろりと平らげた。
瑞希の弁当箱も受け取って家に返しに行ったけど、花音ちゃんの姿はなかった。
ついでに洗面所を借りて鏡をのぞいたら、案の定、締まりのない顔でヘラヘラしてて、自分でも気持ち悪かった。