君に花を贈る
Day4「ロずさむ」
だいぶ蒸し暑くなってきた、五月も下旬のこと。
須藤造園さんに納品に行くと、今日はお客さんが来ていた。
「お邪魔しまーす」
接客の邪魔にならないよう、声を落として裏口から入る。
お客さんと話していた藤乃さんが、ぱっと振り返って私と目を合わせると、ふわっと笑顔になった。
「花音ちゃん! いらっしゃい!」
「お邪魔してます。アジサイをお持ちしました」
できるだけ小声で言うと、藤乃さんは笑顔のまま頷く。
「ありがとう。理人ー、ちょっと待っててー」
「はーい」
「じゃ、行こうか」
「えっ、お客様は……?」
「あれは、半分くらい客じゃないから、大丈夫」
……ってことは、半分はお客さんなのでは?
藤乃さんの向こうには、スラッとした綺麗な顔立ちの男の子が立っていた。
さらさらのストレートヘアに、遠目でもわかるくらい長いまつげ、柔らかい笑顔。私と目が合うと、にこっと微笑んで、会釈してくれる。
「花音ちゃん、こっち」
「あ、はい」
珍しく低めの声で言う藤乃さんに、そっと腕を引かれてトラックまで戻る。
アジサイの切り花と鉢をそれぞれ抱えて戻ると、さっきの男の子がバラの前に立っていた。
王子様みたいにきれいな男の子と、バラ。すごい、童話の挿絵みたいな光景が広がってる……。
「はわー……」
「ちょっとさあ、理人さあ!」
思わず見とれていたら、藤乃さんが少し渋い顔で、私と理人さんの間に割って入った。
「なんですか?」
「お前が王子なの、すっかり忘れてた。誰にでもきれいな顔するの、やめてくれない?」
「何言ってるんですか。ああ、こちらが花音さんですね」
藤乃さんの向こうから、理人さんがひょいっとこちらに顔を出した。
穏やかな笑顔で会釈してくれたので、私も慌てて頭を下げる。
でも……こちらがって、ことは……藤乃さん、私のこと話してたの?
「え、あの、須藤さん、私のこと、なにか……?」
須藤造園さんに納品に行くと、今日はお客さんが来ていた。
「お邪魔しまーす」
接客の邪魔にならないよう、声を落として裏口から入る。
お客さんと話していた藤乃さんが、ぱっと振り返って私と目を合わせると、ふわっと笑顔になった。
「花音ちゃん! いらっしゃい!」
「お邪魔してます。アジサイをお持ちしました」
できるだけ小声で言うと、藤乃さんは笑顔のまま頷く。
「ありがとう。理人ー、ちょっと待っててー」
「はーい」
「じゃ、行こうか」
「えっ、お客様は……?」
「あれは、半分くらい客じゃないから、大丈夫」
……ってことは、半分はお客さんなのでは?
藤乃さんの向こうには、スラッとした綺麗な顔立ちの男の子が立っていた。
さらさらのストレートヘアに、遠目でもわかるくらい長いまつげ、柔らかい笑顔。私と目が合うと、にこっと微笑んで、会釈してくれる。
「花音ちゃん、こっち」
「あ、はい」
珍しく低めの声で言う藤乃さんに、そっと腕を引かれてトラックまで戻る。
アジサイの切り花と鉢をそれぞれ抱えて戻ると、さっきの男の子がバラの前に立っていた。
王子様みたいにきれいな男の子と、バラ。すごい、童話の挿絵みたいな光景が広がってる……。
「はわー……」
「ちょっとさあ、理人さあ!」
思わず見とれていたら、藤乃さんが少し渋い顔で、私と理人さんの間に割って入った。
「なんですか?」
「お前が王子なの、すっかり忘れてた。誰にでもきれいな顔するの、やめてくれない?」
「何言ってるんですか。ああ、こちらが花音さんですね」
藤乃さんの向こうから、理人さんがひょいっとこちらに顔を出した。
穏やかな笑顔で会釈してくれたので、私も慌てて頭を下げる。
でも……こちらがって、ことは……藤乃さん、私のこと話してたの?
「え、あの、須藤さん、私のこと、なにか……?」