君に花を贈る
翌週、須藤さんのところに顔を出すと、お店の奥の事務所で、いつものようにお茶を出してくれた。今日はそれだけじゃなく、クッキーまで添えられていた。
「こないだ、うるさくてごめん。お詫びってわけじゃないけど、もらいもんだし、いっぱいあるから、良かったら食べて」
「ありがとうございます。いただきますね」
見た目からして高級そうなクッキーが、おしゃれな木のお皿に乗せられて出てきた。
……なんていうか、こういうところに、センスを感じる。
ただ皿に乗ってるだけなのに、クッキーって、こんなにおしゃれになるんだなあ。
クッキーを口に運びながらふと見ると、藤乃さんはお店のカウンターで、私が持ってきたナデシコを広げていた。
お店の花と組み合わせながら、小さなブーケがどんどん出来上がっていく。
「……」
私は藤乃さんの手元より、ずっと横顔ばかりを見ていた。
いつもは穏やかに笑いかけてくれるその顔が、今は花を真剣に見つめている。
いくつかある中から、ほとんど迷いもなく、スッと一番しっくりくる花を手に取る。
きゅっと結ばれた口元も、鋭く花を見つめる目つきも、かっこよくて、胸が高鳴る。
「ん、こんなもんかな。花音ちゃん、どの色が好き?」
「えっ!?」
藤乃さんをじっと見すぎてたせいで、不意に目が合ってびっくりして、変な声が出てしまった。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
気がつくと、藤乃さんの手元には五つのミニブーケが並んでいた。青、紫、ピンク、黄色、緑――どれも可愛くて、ひとつなんて選べない。
いったい何を食べたら、こんなにセンス良くなれるんだろう。
「どれも素敵ですけど……紫かなあ。須藤さんっぽいっていうか……あ、藤乃さんの“藤”から、なんとなく連想しちゃって」
センスのかけらもない選び方しちゃって、なんだかちょっと恥ずかしい。
でも、藤乃さんはくすっと笑ってくれた。
「これ、俺っぽいんだ? へぇ。……じゃあ、俺が花音ちゃんに選ぶなら、これかな」
そう言って藤乃さんが手に取ったのは、ピンクのブーケだった。
まさかの色に、どう反応したらいいのか、わからなくなってしまう。
「ピンク……なんですね……?」
「うん。あんまり好きじゃなかった?」
「いえ、好きじゃないわけじゃないんですけど……言われたこともないし、自分でも選ばないので、ちょっと驚きました」
「そう? 可愛くて、似合うと思うけどね」
そう言って、藤乃さんは裏口へ出て行ってしまった。
すぐに戻ってきた藤乃さんの手には、ピンク色のシャクヤクがあった。
「これね、少し前にドライフラワーにしたもので、ちょっと色はくすんでるけど……」
そのシャクヤクの花が、私の髪にそっと添えられた。
毎日外で畑仕事をしてるから、日焼けして髪もパサついていて、ぜんぜんきれいじゃない。だから、そんなふうに花を添えて、優しい目で見ないでほしい。
「こないだ、うるさくてごめん。お詫びってわけじゃないけど、もらいもんだし、いっぱいあるから、良かったら食べて」
「ありがとうございます。いただきますね」
見た目からして高級そうなクッキーが、おしゃれな木のお皿に乗せられて出てきた。
……なんていうか、こういうところに、センスを感じる。
ただ皿に乗ってるだけなのに、クッキーって、こんなにおしゃれになるんだなあ。
クッキーを口に運びながらふと見ると、藤乃さんはお店のカウンターで、私が持ってきたナデシコを広げていた。
お店の花と組み合わせながら、小さなブーケがどんどん出来上がっていく。
「……」
私は藤乃さんの手元より、ずっと横顔ばかりを見ていた。
いつもは穏やかに笑いかけてくれるその顔が、今は花を真剣に見つめている。
いくつかある中から、ほとんど迷いもなく、スッと一番しっくりくる花を手に取る。
きゅっと結ばれた口元も、鋭く花を見つめる目つきも、かっこよくて、胸が高鳴る。
「ん、こんなもんかな。花音ちゃん、どの色が好き?」
「えっ!?」
藤乃さんをじっと見すぎてたせいで、不意に目が合ってびっくりして、変な声が出てしまった。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
気がつくと、藤乃さんの手元には五つのミニブーケが並んでいた。青、紫、ピンク、黄色、緑――どれも可愛くて、ひとつなんて選べない。
いったい何を食べたら、こんなにセンス良くなれるんだろう。
「どれも素敵ですけど……紫かなあ。須藤さんっぽいっていうか……あ、藤乃さんの“藤”から、なんとなく連想しちゃって」
センスのかけらもない選び方しちゃって、なんだかちょっと恥ずかしい。
でも、藤乃さんはくすっと笑ってくれた。
「これ、俺っぽいんだ? へぇ。……じゃあ、俺が花音ちゃんに選ぶなら、これかな」
そう言って藤乃さんが手に取ったのは、ピンクのブーケだった。
まさかの色に、どう反応したらいいのか、わからなくなってしまう。
「ピンク……なんですね……?」
「うん。あんまり好きじゃなかった?」
「いえ、好きじゃないわけじゃないんですけど……言われたこともないし、自分でも選ばないので、ちょっと驚きました」
「そう? 可愛くて、似合うと思うけどね」
そう言って、藤乃さんは裏口へ出て行ってしまった。
すぐに戻ってきた藤乃さんの手には、ピンク色のシャクヤクがあった。
「これね、少し前にドライフラワーにしたもので、ちょっと色はくすんでるけど……」
そのシャクヤクの花が、私の髪にそっと添えられた。
毎日外で畑仕事をしてるから、日焼けして髪もパサついていて、ぜんぜんきれいじゃない。だから、そんなふうに花を添えて、優しい目で見ないでほしい。