君に花を贈る
結局、片付けが終わったころには、すっかり夜になっていた。
空の端に三日月が浮かんでいて、プレゼントを買いに行くどころか、会いに行くのももう無理な時間。そもそも一日中外で働いて、汗まみれだし……。
帰って片付けて、シャワーを浴びる。
それから夕飯を済ませて、ベッドに倒れ込んだ。
「……全然、わかんねぇ」
二十代半ばの女の子が喜んでくれて、彼氏でもない男からもらっても引かれない……そして、あの子が笑ってくれるようなもの。
ぼんやりスマホを眺めていたら、突然震え出して、誰からかも確認せずに、うっかり取ってしまった。
「はい……瑞希?」
瑞希の名前が見えたから、そう聞いたら、ちょっと間があった。
なんだ……?
『あ、すみません……えっと、花音です』
「は……? えっ、花音ちゃん……!? うわっ、いった……!」
びっくりしすぎて、ベッドから転げ落ちた。
いってぇ……なにこれ、どういうこと……?
スマホを見ても、画面には瑞希の名前が出ている。
慌てて起き上がって、なぜか正座してからスマホを耳に当てた。
「ご、ごめん。びっくりしちゃった。えっと、どうしたの?」
『すみません、こんな時間に。しかも瑞希のスマホから……。その、瑞希が電話しろってうるさくて』
「……ああ、そういうことか。えっと、誕生日おめでとう。今日、だったよね?」
瑞希のお節介に、今回は素直に甘えさせてもらう。
持つべきものは、好きな子を妹に持つ友達……。
『は、はい、そうです。あ……瑞希ですね。余計なことを……。でも、ありがとうございます。須藤さんにお祝いしてもらえるなんて、嬉しいです』
「もうちょっと早く知ってたら、ちゃんとプレゼント用意できたのに。ごめん、まだ何にも用意できてない。でも、絶対何か贈るから。待ってて」
『祝ってもらえただけで、十分ですよ』
「俺が、贈りたいんだ。なんか欲しいもの、ない?」
『すぐには思いつきませんけど……。少し、考えてもいいですか?』
「もちろん。ゆっくり考えて」
ふわっとあくびが出て、時計を見ると、もう日付が変わっていた。
「ごめんね、明日早いから、もう寝るね。電話くれて、ありがと」
『あ、すみません、こんな遅い時間に。……わ、もう日付変わってる。じゃあ、今年の誕生日の最後に話したのは須藤さんですね』
そういうこと、言わないでくれ……電話、切れなくなるし、会いたさが爆発しそう。
「……来年の誕生日は、一番に『おめでとう』って言いたい」
思わず口に出た。でも、もう仕方ない。言いたくなったんだから。
スマホの向こうは、しんと静まり返っていた。
言わなきゃよかった。なんとか誤魔化して通話を終えようとしたとき、花音ちゃんの声が聞こえた。
『じゃあ、それを誕生日プレゼントにしてください』
「えっ? ……それって、来年のプレゼントになっちゃわない?」
『あー、たしかに……。でも、今はそれがいいんです。えっと……おやすみなさい』
「……うん。おやすみ。……誕生日、昨日になっちゃったけど、おめでとう」
名残惜しさで胸がいっぱいだったけど、なんとか通話を切った。
……これ、プレゼントもらったのは俺のほうじゃん。
枕に顔を埋めて、変な声が出るのを必死でこらえた。
空の端に三日月が浮かんでいて、プレゼントを買いに行くどころか、会いに行くのももう無理な時間。そもそも一日中外で働いて、汗まみれだし……。
帰って片付けて、シャワーを浴びる。
それから夕飯を済ませて、ベッドに倒れ込んだ。
「……全然、わかんねぇ」
二十代半ばの女の子が喜んでくれて、彼氏でもない男からもらっても引かれない……そして、あの子が笑ってくれるようなもの。
ぼんやりスマホを眺めていたら、突然震え出して、誰からかも確認せずに、うっかり取ってしまった。
「はい……瑞希?」
瑞希の名前が見えたから、そう聞いたら、ちょっと間があった。
なんだ……?
『あ、すみません……えっと、花音です』
「は……? えっ、花音ちゃん……!? うわっ、いった……!」
びっくりしすぎて、ベッドから転げ落ちた。
いってぇ……なにこれ、どういうこと……?
スマホを見ても、画面には瑞希の名前が出ている。
慌てて起き上がって、なぜか正座してからスマホを耳に当てた。
「ご、ごめん。びっくりしちゃった。えっと、どうしたの?」
『すみません、こんな時間に。しかも瑞希のスマホから……。その、瑞希が電話しろってうるさくて』
「……ああ、そういうことか。えっと、誕生日おめでとう。今日、だったよね?」
瑞希のお節介に、今回は素直に甘えさせてもらう。
持つべきものは、好きな子を妹に持つ友達……。
『は、はい、そうです。あ……瑞希ですね。余計なことを……。でも、ありがとうございます。須藤さんにお祝いしてもらえるなんて、嬉しいです』
「もうちょっと早く知ってたら、ちゃんとプレゼント用意できたのに。ごめん、まだ何にも用意できてない。でも、絶対何か贈るから。待ってて」
『祝ってもらえただけで、十分ですよ』
「俺が、贈りたいんだ。なんか欲しいもの、ない?」
『すぐには思いつきませんけど……。少し、考えてもいいですか?』
「もちろん。ゆっくり考えて」
ふわっとあくびが出て、時計を見ると、もう日付が変わっていた。
「ごめんね、明日早いから、もう寝るね。電話くれて、ありがと」
『あ、すみません、こんな遅い時間に。……わ、もう日付変わってる。じゃあ、今年の誕生日の最後に話したのは須藤さんですね』
そういうこと、言わないでくれ……電話、切れなくなるし、会いたさが爆発しそう。
「……来年の誕生日は、一番に『おめでとう』って言いたい」
思わず口に出た。でも、もう仕方ない。言いたくなったんだから。
スマホの向こうは、しんと静まり返っていた。
言わなきゃよかった。なんとか誤魔化して通話を終えようとしたとき、花音ちゃんの声が聞こえた。
『じゃあ、それを誕生日プレゼントにしてください』
「えっ? ……それって、来年のプレゼントになっちゃわない?」
『あー、たしかに……。でも、今はそれがいいんです。えっと……おやすみなさい』
「……うん。おやすみ。……誕生日、昨日になっちゃったけど、おめでとう」
名残惜しさで胸がいっぱいだったけど、なんとか通話を切った。
……これ、プレゼントもらったのは俺のほうじゃん。
枕に顔を埋めて、変な声が出るのを必死でこらえた。