愛しのマイガール
返答のあと、天城さんはそれ以上何も言わなかった。
けれど私は、静かに息を詰めている自分に気づいて、そっと膝の上で指を組み直す。
私が思っていたよりも、この戦いはずっと現実的で、冷たくて、そして逃げられないもの。
なのに私は、まだ心のどこかで──“ハルちゃん、早く帰ってきて”なんて、弱い期待を抱いている。
だめだ。そんなの、もうやめなきゃ。
私は、戦わなきゃいけないんだ。
守ってもらうだけじゃなく、自分の意思で。
だから、たとえ心細くても、向き合わなきゃ。
私は小さく頷いて、回答案の草稿に目を落とした。
———
その後打ち合わせが終わったのは、昼を少し過ぎたころだった。
天城さんは一冊のファイルを私に手渡し、「本日の進捗記録です。後ほど月城専務にも報告します」とだけ告げて去っていった。
冷静で隙のない背中が、扉の向こうに消える。
その瞬間、書斎の空気がふっと軽くなった気がして、私はようやく背もたれに身を預けた。
ほんの数時間の作業だったのに、どっと疲れが押し寄せる。
目を閉じればぐらりと体が傾きそうな感覚に襲われて、思わず机の端をつかんだ。
──だめ。まだ今日は終わってない。
午後は、婚約者教育のレッスンがある。部屋の時計に目をやれば、約束の時間まであと十五分。
私は重たい体をなんとか引き起こし、立ち上がった。