愛しのマイガール
茜色の空が、ゆっくりと夜の帳に溶けていく。
「独占したい気持ちも、手放すのが怖い気持ちも、たぶんまだ俺の中にある。でも……俺を救ってくれたのは、紛れもなく、るりの笑顔だったから」
瑠璃の目が、そっと彼を見つめる。
「だから、今度は俺が君の笑顔を守りたい」
風がふわりと吹いて、彼の髪を揺らす。
「それが、俺の今の願いだ」
その声は、まるで誓いのようだった。
「……ありがとう、ハルちゃん」
私がそう言うと、彼は少しだけ驚いたような顔をして、それから、そっと私の手を握り返してくれた。
言葉じゃなくても伝わる想いが、たしかにそこにあった。
風が通り過ぎていく。淡く染まっていた空が、ゆるやかに夜へと変わっていく。
この時間が、きっと始まりになる。
どちらかが誰かの影になるんじゃなくて、並んで歩けるような──そんな未来の。
私は、そっと息を吸い込んで、笑った。
「……ねぇ、ハルちゃん」
手を握ったまま、そっと声をかける。
「もし予定が空いてたら、今度、私をどこかに連れて行ってくれないかな?」
ハルちゃんが、ふと瞬きをする。
「どこか……?」
「うん。ハルちゃんのこと、もっと知りたいの。お仕事のこととか、どんな人たちと関わってるのかとか……まだ全然、知らないから」
ただの見学でも、付き添いでもない。書類の中だけじゃない、彼の歩く場所を、この目で見てみたかった。
ハルちゃんは、すぐには答えなかった。
でも、ひと呼吸おいて、穏やかに微笑んだ。
「……分かった。案内するよ。俺を形造る場所へ、俺の大事な人を連れて行く」
その声音には、ほんの少し照れくささが混じっていて、それでもまっすぐだった。
くすぐったさを胸にまといながら、夜がゆっくりと、私たちを包みこんでいった。