愛しのマイガール

茜色の空が、ゆっくりと夜の帳に溶けていく。

「独占したい気持ちも、手放すのが怖い気持ちも、たぶんまだ俺の中にある。でも……俺を救ってくれたのは、紛れもなく、るりの笑顔だったから」

瑠璃の目が、そっと彼を見つめる。

「だから、今度は俺が君の笑顔を守りたい」

風がふわりと吹いて、彼の髪を揺らす。

「それが、俺の今の願いだ」

その声は、まるで誓いのようだった。

「……ありがとう、ハルちゃん」

私がそう言うと、彼は少しだけ驚いたような顔をして、それから、そっと私の手を握り返してくれた。

言葉じゃなくても伝わる想いが、たしかにそこにあった。

風が通り過ぎていく。淡く染まっていた空が、ゆるやかに夜へと変わっていく。

この時間が、きっと始まりになる。
どちらかが誰かの影になるんじゃなくて、並んで歩けるような──そんな未来の。

私は、そっと息を吸い込んで、笑った。


「……ねぇ、ハルちゃん」

手を握ったまま、そっと声をかける。

「もし予定が空いてたら、今度、私をどこかに連れて行ってくれないかな?」

ハルちゃんが、ふと瞬きをする。

「どこか……?」

「うん。ハルちゃんのこと、もっと知りたいの。お仕事のこととか、どんな人たちと関わってるのかとか……まだ全然、知らないから」

ただの見学でも、付き添いでもない。書類の中だけじゃない、彼の歩く場所を、この目で見てみたかった。

ハルちゃんは、すぐには答えなかった。
でも、ひと呼吸おいて、穏やかに微笑んだ。

「……分かった。案内するよ。俺を形造る場所へ、俺の大事な人を連れて行く」

その声音には、ほんの少し照れくささが混じっていて、それでもまっすぐだった。

くすぐったさを胸にまといながら、夜がゆっくりと、私たちを包みこんでいった。

< 124 / 200 >

この作品をシェア

pagetop