愛しのマイガール
「……るりから離れろ!」
鋭く、怒りを焼き付けるような声が、空気を裂いた。
「っ……!」
翔真さんが振り返るよりも早く、足音が駆け寄ってきた。次の瞬間、私の前にハルちゃんが立っていた。
間一髪で翔真さんと私のあいだに割り込むように、腕を掴む。その目は怒りに燃え、何かを壊す一歩手前の激情が全身から滲んでいた。
「……彼女に触れようとしたら、次は許さない」
その低い声には、鋼のような硬さと、燃えるような熱があった。
翔真さんは一歩退き、目を細めてハルちゃんを見据えた。
「……ああ。月城、か」
翔真さんは鼻で笑い、薄く口元をゆがめた。
「へえ……ピンチの時に現れて悪役から女を守るヒーロー、ってか。ほんと、どこまでも完璧な男だな」
その言い方に、冷たい皮肉と見下しが混じっていた。
「……お前にはわからないだろうな。能力があって、権力があって、何もかも全部手に入れて……本当に惚れた女と、一緒になれるお前には」
そう言った翔真さんの声色には、悲痛の色が混ざっていた。
「それがどうした」
けれどハルちゃんの声は低く、容赦なく鋭く返る。
「他人の権力に圧されて自分を見失ったのは、お前自身の問題だ。誰かを巻き込んでいい理由にはならない」
翔真さんの目がすっと細くなり、笑みが消える。
「……巻き込んだ、ね」
低く吐き捨てるように言ってから、翔真さんは視線を逸らした。