愛しのマイガール
自然とそう口にしていた。変に取り繕おうとせずそのままの気持ちを口にできたのは、目の前の二人がとても自然体だったからかもしれない。
女性はそんな私を見て、ふんわりとやさしい声で言った。
「そのお菓子、未開封なのでよかったらもらってください」
「え、いえ、そんな……」
遠慮の言葉が出かけたけれど、彼女はただ微笑んでいるだけで、それ以上は何も言わなかった。
言葉を重ねないやさしさ。知らないからこそ、余計な詮索をしないやさしい距離感。それが今の私には、ほんとうにありがたかった。
「……ありがとうございます。いただきます」
私はぺこりと頭を下げて、小さな包みをぎゅっと握り直す。
そのとき、母親に手を引かれていた紬ちゃんが、にこっと笑った。
「おねえちゃん、もう、にっこりした?」
「…うん、したよ。ありがとう、紬ちゃん」
「つー、やさしい?」
「うん、すっごく優しいよ」
私が笑うと、紬ちゃんの顔がぱあっと華やいだ。女性はそれを眺め、ほっとしたように目元を和らげた。
「……それじゃあ、私たちはそろそろ。お邪魔しました」
「あ、あの……っ、お菓子、ありがとうございました!」
女性は笑顔を残し、紬ちゃんと手をつなぎ歩き出す。小さな足音と、やわらかな風。ふたりの後ろ姿が庭園の緑に溶け込んでいく。
静けさが戻ったテラス席に、私は一人ぽつんと残る。
だけど、さっき感じていた寂しさはすっかり消えていた。小さな女の子の無垢なまなざしと、優しさに満ちた静かな気遣い。
私はまた、誰かに救われた。
そっと頬に触れると、もう涙は乾いていた。