愛しのマイガール
クッキーの包みをそっと膝の上に置いて、私は深く息をついた。
さっきまであんなにこらえきれなかった涙は、不思議ともう出てこなかった。
テラスには私ひとり。穏やかな陽射しの中で、風の音と鳥の声だけが耳に届く。
残っていたのは、言いようのない静けさだった。まるで、涙と一緒に何かを流しきってしまったみたいに。
「…情けないなあ…」
ぽつりと漏れた言葉は、自分でも気づかないほど小さかった。
傷ついて、絶望して。それでも私の周りには助けてくれる人たちばかりで溢れてる。愛されてるって、大事にされてるって、そう思える。
だけどこんなのさただ甘えるばかりの、どこかバランスの悪い関係。そんな自分に、嫌気が差してしまう。
これじゃあ何も変わらない。翔真さんの嘘に騙されて踊らされていた、あの時と。
「……バカみたい」
自嘲するように息を吐いたときだった。背後から、足音が近づいてくる。
「るり、お待たせ」
聞き慣れた声に、私はゆっくりと振り返る。
やっぱりハルちゃんだった。スーツの襟元を少し緩めていて、それだけで少しラフに見えるのにどこまでもきちんとしていて、やっぱり少し、私とは別の世界の人に見えた。
「ハルちゃん」
自然と口をついた名前に、ハルちゃんは優しく微笑んでから、向かいの席に腰を下ろす。
「お仕事の話、終わった?」
「ああ。るりの方は、少しは気分転換になったか?」
「うん…ごめんね。ハルちゃん忙しいのに…私、たくさん迷惑かけてばっかりで」
うつむきかけた私の言葉を、ハルちゃんがすぐに否定する。
「るりのことで迷惑に思うことなんか、ひとつもないよ」
その声は優しくて、まっすぐで、あたたかかった。
甘えすぎてしまっているとわかっている。それでもその優しさは、心の奥にまっすぐ染み込んでくる。
嬉しくて、だけど申し訳なくもあって。
そんな事もぜんぶ、私はまだちゃんと応えられていない。
そんなふうに思っていた時だった。ハルちゃんの表情がふいに引き締まった。
——何かを、決めたような顔だった。