愛しのマイガール

窓の外にはもう夜の気配が忍び込んでいて、街灯の明かりが流れるように通り過ぎていく。
静かな車内。革のシートの感触。わずかに香るウッディなフレグランス。

全部が、今の私には非日常で。

でも隣にいるハルちゃんだけは、ずっと昔から知っている“ハルちゃん”だった。

「緊張してる?」

ふいに問いかけられて、私は無理やり笑った。

「……してる。口から心臓が出ちゃいそう」

「そうだと思った」

それでもハルちゃんは、何も責めずにただその言葉を受け止めてくれた。
その優しさが、怖いほど心強かった。

そして車は、やがて目的地へと静かに滑り込んでいく。

煌びやかな光に包まれた会場の外観が、徐々に車窓に映り込んでくる。
ここを降りたら、そこには“婚約者・蓬来瑠璃”としての私が待っている。

私は最後にもう一度だけネックレスのトップを指先でなぞった。
その輝きが、今の私を背中から押してくれる気がして。

(……頑張ろう。ハルちゃんに迷惑だけは、絶対にかけたくない)

そう自分に言い聞かせながら、私はそっと深く息を吐いた。

< 47 / 200 >

この作品をシェア

pagetop