愛しのマイガール
しばらくして車がゆっくりと停車し、静かにドアが開けられた。
降りた瞬間、冷たい夜風がスカートの裾を揺らす。
けれどそれ以上に、びりびりとした視線の空気が肌に触れるのを感じた。
まばゆいライトに照らされたエントランス。
ホテルの大理石の階段には、すでに多くの来賓が集まっていて、振り返った一部の視線が、はっきりとこちらに向いているのがわかる。
(……これが、“注目される”ってことなんだ)
ただの視線のはずなのに、体の奥が少しだけ固まる。
「大丈夫。ゆっくりでいい」
そう声をかけながら、ハルちゃんが私の手を取る。
その手は、さっきと変わらずあたたかくて、どこまでも落ち着いていた。
スーツも、表情も、すべて完璧な彼の横に並んでいることが、現実のようで現実じゃない気がする。
彼の手の温もりだけが、今の私を支えてくれていた。
会場の扉が開くと、すぐに視線が一斉にこちらを向いた。
高級感のあるシャンデリア、クローク、ホールに響く低いBGM。
すべてが非日常の中で、私はただハルちゃんの手を頼りに、歩を進める。
場違いなんじゃないか。
そんな思いが頭の中をかすめる。
そのとき、司会者の落ち着いた声が会場に響いた。