愛しのマイガール
スタイリストから渡された衣装に袖を通し、ライトの下に立つ。カメラマンがレンズをのぞきながら声をかけるたび、私は少しずつ表情を変えて応えていく。
「はい、いいよ…うん、そのまま。もう少し、視線だけカメラに……そう!」
カシャ、カシャ、と軽やかなシャッター音がスタジオに響く。
撮影の合間、メイク直しのために鏡の前に座ると、そばに置いていたスマホが静かに震えた。控えめな振動がメイク台をかすかに揺らす。
画面をのぞくと、恋人である翔真さんからのメッセージだった。
[今日遅くなる? 撮影後で疲れてるだろうけど、少しだけ会えたら嬉しいな]
思わず、手が止まった。
疲れてることに気づいてるくせに、こうして誘ってくる。しかも、そのあとに優しい言葉を添えて。
……そういうところが、翔真さんのずるいところだ。
でも、こんなふうに声をかけてもらえるのは嬉しかった。彼はとても優秀で、仕事も忙しくて、そう頻繁に会えるわけじゃない。
だから、たとえ急でも声をかけてもらえるだけで十分だった。
私はすぐに返信を打つ。
[行く!]
スタンプも絵文字もつけない、でも真っ直ぐなひと言。ほんの少し唇の端が上がるのを感じながら、スマホをそっと元の位置に戻した。