愛しのマイガール
そして撮影が終わると、私は夜風の中を肌に受けながら駆け足で待ち合わせ場所へ向かった。
翔真さんが指定してきたのは、駅近くのカフェバー。仕事帰りの人々で賑わう中、テラス席の一角に彼の姿を見つけた。
「翔真さんっ!」
声をかけながら駆け寄ると、彼が顔を上げて、少しだけ笑った。
「ごめんなさい、待った?」
「いや。ちょうど今来たとこ」
そう言って、彼は手元のスマホを伏せた。
店員がタイミングよくオーダーを取りに来て、翔真さんがシャンパンを頼む。そして運ばれてきたグラスを、私達は軽く触れ合わせた。
しゅわしゅわと泡の弾ける音が、涼しい夜気にゆっくりと溶けていく。
他愛もない会話の中で、翔真さんは自然な口調で今日の撮影について聞いてきた。
「撮影はどうだった? 今日の現場もそうだけど、瑠璃ってどの企画でも引っ張りだこだよな」
「今日は春コスメの特集だったよ。“透明感と自然体”がテーマだったから、メイクも少しナチュラル寄りにしてもらって」
話しながら、自分の頬にそっと触れる。
私は今、25歳。
ついに、あの有名な“肌の曲がり角”に差しかかっている。
読者モデルの仕事は、見た目よりずっと地道だ。
肌の調子や光の角度、カメラ映りまで、毎回試行錯誤の繰り返し。華やかに見える反面、その裏では、繊細な調整の積み重ねでようやく成り立っている。