愛しのマイガール
あの裏切りのあと、私なんて誰にも愛される価値がないと思ってた。
たぶん、ずっと不安だった。
翔真さんが好きになってくれたのは、私自身じゃないんじゃないかって。
読者モデルとして雑誌に載って、きれいに着飾って、周りの視線を集めていた“蓬来瑠璃”。
そんな肩書きや見た目の部分だけで好かれていた気がしてた。
だからハルちゃんから優しくされるたび、それがいつか壊れる気がして、怖くなった。誰かに守られるには、自分の価値を証明しなきゃいけない。
でもハルちゃんは、最初から何も求めてなんかなかった。ただの私を、そのまま受け止めてくれていた。
家族のみんなも変わらず、あの頃と同じように笑ってくれている。
なにも飾らず、なにも証明せずにいられる場所が、ここにある。
私が私でいることか、ちゃんと許されている。
それだけで、心のどこかがふっと軽くなった気がした。
「さあさあ!お兄ちゃんのシスコンも落ち着いたとのろで、お食事を再開しましょう?デザートに杏仁豆腐もあるわよ〜」
お母さんの明るい声が空気を弾いた。それにつられて、私も弾んだ声を上げる。
「ほんと?私お母さんの杏仁豆腐だいすき!」
「ふふ、そうだと思って用意してたのよ〜」
立ち上がってキッチンに向かうお母さんの背中を目で追いながら、私は気づけば小さく息を吐いていた。
隣に座るハルちゃんが、そっと私の手を握ってきた。
(……ありがとう)
声には出さなかったけれど、ちゃんと伝わっている気がした。私はそっと、彼の手を包み返す。
——少しずつでいい。
私はまた、自分を信じられるようになりたい。
そう思えた、やさしい時間だった。