愛しのマイガール
❁。✩


月がやわらかく輪郭を浮かべるころ、俺たちは瑠璃の家族に見送られ蓬来家を後にした。
そのまましばらく道を進み、黒塗りの車はゆるやかに月城邸の門をくぐった。

助手席のドアが開き、瑠璃が外の空気に一瞬肩をすくめる。
気温は下がりはじめていたが、空は澄み、庭園の木々には控えめなライトが灯されていた。

「……ここが、ハルちゃんの家…?」

るりがポツリとこぼす。

「そう。ここは別邸だけど、俺が生活している家だよ。親父たちは本邸の方にいるから、遠慮しないでくれ」

「……あ、ありがとう」

るりは少し戸惑っているようで、俺が声をかけるまで静かに外観を見つめていた。

本来なら、彼女にはホテルに戻って落ち着いてもらう選択もあった。けれど、それでは意味がない。

ホテルは“保護”の場所に過ぎない。俺が彼女を守りたいのは、どこかに匿うためじゃない。

「月城巴琉」という人生の中に、彼女を迎え入れるためだ。

肩書きでも、義務でもなく。誰より大切な存在としてそばにいてほしいと思ったから、俺は今日、この家に彼女を招いた。

彼女の家族に挨拶をした、大事な日に。


「中に入ろうか。軽く中を案内するよ」

「う、うん」

俺の横に並んで歩き出したるりの足取りは、まだ慎重だった。

応接間で使用人への紹介と簡単に部屋の説明を終えたあと、るりはふと窓の外に目を向けた。
月明かりが、庭の芝を淡く照らしている。

「気になる?」

「え!?」

ぼんやりと外を見つめていたるりに声をかけると彼女は一瞬驚き、そして照れたように笑った。

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