愛しのマイガール
応接室を出たあとは、そのまままっすぐ部屋に戻らず、しばらく廊下の窓辺に立ち尽くしていた。
磨き上げられたガラスの向こうでは、庭園の木々がわずかに揺れている。
風は穏やかなはずなのに、胸の奥はずっとざわついていた。
るりの名前があんな風に並べられた文面の上にあるのを見たとき、怒りでどうにかなりそうだった。
何も知らず、ただ真っ直ぐに誰かを信じただけの彼女が。今、誰かの都合とプライドのために汚名を着せられようとしている。
何が正しいかなんて関係ない。世間がどう見ようと、俺は知ってる。
るりは、誰より純粋でまっすぐな女だ。
だからこそ、俺の言葉で伝える。どんなに痛む現実でも、向き合うときに隣にいるのは俺でありたい。
「巴琉様、ご朝食の準備が整いました。瑠璃様もすでにお目覚めとのことです」
控えめな執事の声に、俺は短く頷いた。
「……分かった」
一歩を踏み出しながら、背筋を伸ばす。
彼女に伝えなければならない言葉は、決して甘くない。けれど言葉のあとには必ず手を差し伸べる。
何があっても、俺は離れないと約束するために。
静かに足音を立てながら、俺はるりの待つ部屋へと歩を進めた。