宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
帝と綾子の間に、形式を超えた深い絆が、今、確かに結ばれた。

そしてこの日、後宮の風が静かに変わった。

綾子は、愛された女から“帝の女御”となったのだった。

それ以来、綾子のお渡りは日々続いた。

帝・彰親が夜毎に綾子を召すという噂は、瞬く間に後宮を駆け巡り、やがて朝廷の大臣たちの耳にも届いた。

「ついにあの帝が、女に心を動かされたか。」

「では次はうちの娘の番だ。」――

そんな思惑のもと、左大臣をはじめとした重臣たちが、こぞって自家の姫君を推薦し始めた。

だが――

帝の心は、ただひとり、綾子にしか向いていなかった。

昼も夜も、想うのはあの女のこと。

香の残り香、肌の柔らかさ、声の余韻。

それらすべてが、帝の心と身体を離さなかった。

ある日、右大臣・源雅綱が、やんわりとした口調で進言した。

「帝……あまり仲がよろし過ぎても、子はできぬと申します。」
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