宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
それは、昔から言い伝えられてきた“情に溺れすぎると子が宿らぬ”という俗説だった。

だが帝は、わずかに眉をひそめながらも、ため息混じりに呟いた。

「……だが、綾子しか抱きたくないのだよ。」

その声音には、甘さよりも切なさがあった。

思いが深くなればなるほど、他の女を抱くことができなくなる。

帝は、すでに綾子なしでは眠れぬほど、心を奪われていた。

雅綱は苦笑しながらも、一歩引いた姿勢で言葉を続けた。

「……それも、ほどほどに。」

帝は応えず、ただ空を仰いだ。

だが胸の内では、綾子の名が、ただ一つ――繰り返されていた。

その晩もまた、帝・彰親の御帳の中には、綾子の姿があった。

深夜の静寂の中、衣擦れの音と、綾子の甘い吐息が微かに響く。

「ああ……」

綾子の声が、柔らかく震えるたびに、帝の心はますます満たされていく。

ただの欲ではない。肌を重ねるたび、ますます彼女に心を奪われてゆく自分に、帝は抗えなかった。
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