宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
まるで、自分は“決めるための存在”ではなく、“最後に印を押すだけの器”のようだ。

帝が沈黙していると、すぐに右大臣・源 雅綱が一歩進み出て、慎重に口を開いた。

「詠子殿は、まだ若く、御年わずか二十にてございます。血筋も申し分なく、後宮の安定のためにも……迎えられてよろしいかと」

どこまでも理屈。どこまでも正論。

帝はただ、静かにその言葉を聞き、眼差しを遠くへ向けた。

心が、鈍く沈む。

それでも――帝は、逃げなかった。

逃げることができなかった。

そして、まるで誰かの指示に従うように、口を開いた。

「……裁可。」

その言葉が発せられた瞬間、場にいた者たちは深々と頭を下げた。

だが、帝の心にはただ、何かがひとつ崩れ落ちる音だけが、虚しく響いていた。
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