宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
心に浮かんだその言葉を、誰にも聞かせぬように、帝はそっと飲み込んだ。

微かな戸惑いと、そしてなぜか胸に広がる淡い違和感を抱えたまま――

帝は、詠子の入内を静かに受け入れた。

「帝、詠子様がご挨拶に来られました。」

女房の声とともに、絹擦れの音が静かに御簾の前へと近づいてくる。

やがて、音が止まり、几帳の影に若い姫君が座す気配が満ちる。

「この度、入内いたしました、藤原詠子でございます。」

その声はまだ幼さを残し、澄んだ高音で御簾越しに響いた。

柔らかく、けれど一生懸命に言葉を選びながら話すその様子は、まるで儀式そのものを夢見てきた少女のようでもあった。

「帝の御身のために、精いっぱい尽くしてまいりたいと……思っております」

綾子とは違う。

年若く、まだ世を知らぬその言葉に、帝・彰親はどこか遠いものを感じながらも、否定はしなかった。

自分が望んで入内させた妃ではない。

けれど、入内した以上、妃は妃だ。
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