宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
だが、そんな時代の自分を、この姫君は見ていたのか。

「そのころから、帝を……ご尊敬申し上げております」

淡い声だが、真っ直ぐな気持ちが伝わってくる。

それは偽りでも、おべんちゃらでもない。

どこかで確かに“見ていた”者の言葉。

帝の胸に、不思議な波が押し寄せた。

義務として迎えた妃に、こんなにも長く心を寄せられていたことを、まるで風が心に吹き込むように感じていた。

「どうして……?」

思わず、問い返していた。

少しの沈黙の後、詠子の声が震えながらも静かに届く。

「……帝のお姿が、私の理想でした。」

その言葉に、彰親の胸の奥で、何かが確かに動いた。

愛ではない。けれど、確かに――無視できない“何か”だった。

「それは、嬉しいことだ。」

帝・彰親がそう告げると、御簾の向こうの詠子はぱっと表情を輝かせた。

その顔は、まるで少女のように素直で、無垢だった。
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