宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
「ほら。こうしていると、安心するだろ」

帝の腕の中で、詠子はふるふると震えながらも、そっと目を閉じた。

そして、静かに涙が一筋、頬を伝う。

「申し訳……ございません……役目を……果たせずに……」

その言葉に、帝は少し眉を寄せる。

「役目?」

「……夜伽の……相手でございます。」

掠れるような声。

詠子にとって、“帝の妃”とはただ美しくあればいいものではなく、身体を捧げることこそが使命と教えられてきたのだろう。

帝は、そっと彼女の髪を撫でた。

「そんなもののために、そなたを召したのではない。」

その言葉は、綾子にも言えなかったほど――静かで、深い優しさに満ちていた。

「妃の役目は、夜伽の相手だけではないだろう。」

帝・彰親の静かな言葉に、詠子はかすかに唇を震わせた。

だが、すぐに俯き、絞り出すように言った。

「……でも……」
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