宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
小さな声には、どうしようもない劣等感と自覚が滲んでいた。

「綾子様がいる限り……私は、ご寵愛は頂けません。」

それは、年若き妃が誰よりも冷静に理解している現実だった。

自分が政治の均衡のために入内させられた存在であることも、帝の心がすでに誰かに染まっていることも――全て。

それでも、せめて。

「だから……欲望を満たすだけで、いいのです。せめて、体だけでも……帝に欲して頂ければ、それで……」

いじらしい願いだった。

心を求めるには幼すぎて、諦めるには純粋すぎる少女の声だった。

帝は、その涙を見て、静かに彼女の顔を両手で包んだ。

そして、そっと口づけを落とす。

「んん……」

詠子は驚いたように目を見開き、身体をこわばらせた。

けれど、その一瞬の触れ合いに、全身が熱くなるのを感じていた。

何もされていないのに、ただ唇を重ねただけなのに――
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