宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
心が溶けるように、体がふるふると反応していた。

「……今宵は、ここまでだ。」

帝の囁きは優しく、けれど確かな拒絶でもあった。

詠子の身体に手を伸ばすことなく、そっとその肩を抱き寄せるだけの夜。

それでも詠子は、帝の胸に顔を埋め、小さく「ありがとうございます。」と呟いた。

愛されてはいなくとも、触れてくれたぬくもりだけが、胸の奥を温めていた。

翌日、左大臣・藤原公衛が、笑顔を浮かべて帝の元へやってきた。

「昨夜は、いかがでございましたか。」

帝は少し間を置いて、盃を口に運びながら答えた。

「……まだ、若いな。」

その言葉に、公衛は満足げに目を細める。

「そうでございましょう。まだ二十歳にございますれば。これから帝の御心を癒す存在となりましょう。」

帝はその言葉に頷きもせず、ただ静かに酒を飲み続けた。
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