宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
帝の声音には、余裕と慈しみが滲んでいた。

高頼はどこか安心したように微笑んだ。

「実は少し、心配しておりました。綾子様だけを深く愛されていることが、かえって帝を苦しめはしまいかと。」

「綾子のことは、今も変わらず愛おしい。」

帝は遠くを見るように呟いた。

「だが、詠子は詠子で、心が動いた。あれほど真っ直ぐな想いを向けられては……応えたくなる。」

高頼は深く頷く。

「帝が、心を寄せられる方が増えるのは、我らにとっても喜ばしいことです。」

帝はふっと笑った。

「朕も、そう思いたい。」

帝は少しだけ、詠子に心を寄せていることを、自分で知った。

そしてまた夜に詠子は訪れた。

「今宵で三夜も終わりでございます。ありがとうございました。」

畳に手をつき、深く頭を下げる詠子の声は、どこか寂しげだった。

帝は目を細め、静かに問い返した。

「……礼など言うな。これで終わりだと、そなたは思っているのか?」
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