宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
「可愛らしい方でしたね。」

綾子は、詠子の去っていった姿を思い出しながら、静かにそう言った。

素直な感想だった。若くて、清らかで、そして愛らしい。

だからこそ、綾子は自分の立場を危うく感じていた。

「それだけだ。」

帝は迷いなく言い切ると、綾子の手を取り、その指先に唇を落とした。

「綾子、心を通わせているのは、そなただけだ。」

その言葉に、綾子の瞳が潤んだ。

「……私もです。」

ふるふると震える声で、綾子は帝の頬に触れた。

帝はその手を引き寄せ、指を絡めた。

「今宵も、励むぞ。」

綾子が小さく笑う。「はい。」

帝は起き上がると、綾子を優しく、しかし力強く抱きしめた。

その肌の温もりに、確かなものを感じる。

――綾子だけだった。

これほどまでに、欲しいと思ったのは。

ただの寵愛ではない、心からの渇望だった。
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