宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
「……もったいのうございます。」

「綾子の部屋にこそ、ふさわしい。」

帝の愛は、止まることを知らなかった。

それは、まるで自分の心をすべて物に乗せて捧げるような、激しくも甘い愛情だった。

それは、やがて朝廷中の噂となって広がった。

「帝の綾子様へのご寵愛が止まらぬそうだ。」

「打掛に屏風……いずれも最高級の品。実家を通さずに下賜されたとか。」

「今度は、お二人の馴れ初めを絵巻にさせたいと仰せだとか……」

口々に語られる帝の溺愛ぶりは、やがて政に関わる者たちの耳にも届いていった。

そして最も苛立ちを募らせていたのは、左大臣・藤原公衛であった。

帝の御前に出た彼は、慎重な口調ではあったが、明らかにその眉間には皺が寄っていた。

「帝。」

「何だ、公衛。」

「ご多忙とは存じておりますが……綾子様のお渡りばかりが続いております。」
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