【マンガシナリオ】過保護なお兄ちゃんの溺愛から卒業できない。

第5話【脱・子ども扱い】



○お風呂
朱梛「はーーあーー……」
朱梛(やっぱり私って子どもっぽいのかなぁ? 大学生になってからメイクも服も頑張ってるつもりだけど、耀哉くんから見たらまだガキなのかも)

スマホの通知音。

朱梛「えっ! 夏目先生の新作!?」

ノベマルで夏目はゆるの新連載が始まったことを知らせる通知。お風呂の中で早速読み始める朱梛。

小説の内容
『僕には十年以上片想いしている幼なじみがいる。お隣に住んでいるかわいい女の子。だけど兄妹のように育ったせいか、大学生になっても僕のことを異性として見てくれない』

朱梛「幼なじみの大学生の恋愛もの!? 何これ、共感しまくりなんだけど!」


○翌日・大学
朱梛(夢中になって読んでしまった……。続きが楽しみすぎる!!)
美冬「朱梛ー」
朱梛「美冬! 夏目先生の新作読んだ!?」
美冬「え、読んでない」
朱梛「読んでよ! めちゃくちゃ良かったんだから!」
美冬「昨日執筆しながら寝落ちちゃったんだよね。てゆーか朱梛、合コンどうだったの?」
朱梛「合コンはー、ちょっといいかもって人はいたよ」
美冬「ほんとに!? 連絡先交換した?」
朱梛「……してない」
美冬「なんでしなかったの!?」
朱梛「だって耀哉くんが――、」
美冬「芥川くん?」

ハッとする朱梛。そのまま昨日のことを話す。

朱梛「――って感じで、子ども扱いばっかでムカつくの!」
美冬「ふーん?」
朱梛「私ってそんなに子どもっぽいかなぁ?」
美冬「じゃあこういうのはどう? 今度文芸サークルでバーベキュー大会あるじゃない? そこで芥川くんに大人っぽいところ見せるの」
朱梛「おお……!」
美冬「他大学との交流も兼ねてるし、いい人と出会えちゃうかもよ♡」
朱梛「いいかも!」


○バーベキュー大会に向かう車の中
耀哉が運転する車に乗り込む朱梛と美冬。
朱梛は助手席。

美冬「ありがとう、芥川くん。あたしまで乗せてもらっちゃって」
耀哉「全然」
朱梛「……」※チラっと耀哉を見る
朱梛(耀哉くんが車出してくれるって言うから甘えちゃったけど、運転する耀哉くんがカッコ良すぎる……!!)
耀哉「朱梛、今日はいつもと雰囲気違うね」
朱梛「えっ! うん、バーベキューだから動きやすいカッコにしてみたっ」
耀哉「かわいい」
朱梛「〜〜っっ」※嬉しい
耀哉「……あまりかわいくなりすぎないで欲しいけど」※小声(二人には聞こえてない)
美冬(おやおやおや〜?)※何かを察する


○バーベキュー会場
他大生「今日はよろしくお願いします!」
慶明生「よろしくお願いしまーす!」

朱梛モノローグ:
「グループ分けはそれぞれくじ引きで決まった。必ず別の大学同士でグループを組むけど、慶明は私だけだからちょっと心細い……」

中原「すみません、Bグループってここっすか?」
朱梛「あ、はい! このテーブルです……って」
中原「あ。」
朱梛「中原くん!?」
中原「一葉さん。マジか」
朱梛「えっすごい偶然だね!? 文芸サークルだったんだ!」
中原「一応。一葉さんがいると思ってなかった」
朱梛「私も!」
朱梛(まさかこんなところで会えるなんて! もしかして、運命だったりして――?)

耀哉「……」※朱梛を見ている

バーベキューをしながら話す朱梛と中原。

朱梛「夏目先生の新作読んだ?」
中原「読んだ。すげー続き気になる」
朱梛「だよねぇ!? 主人公のカイトの片想いが切なくてキュンキュンしちゃう!」
中原「夏目先生って心理描写上手いよな。グッとくるってゆうか」
朱梛「わかる〜!!」
中原「一葉さんは自分で小説書かないの?」
朱梛「私には無理だよー」
中原「そう? 書けそうなのに」
朱梛「中原くんは?」
中原「……」
朱梛「あっその反応、もしかして!」
中原「いや、人に見せられるようなものじゃないから」
朱梛「すごいじゃない! 読んでみたいな!」
中原「……マジで?」
朱梛「うんっ」
中原「じゃあもし完成したら――、読む?」
朱梛「読みたい! 楽しみにしてる!」

距離が縮まる中原と朱梛。

中原「一葉さん、あのさ……」
耀哉「ちょっと失礼〜」

二人の間に割り込む耀哉。

耀哉「チャッカマン借りてもいい? こっちの点かなくなっちゃったんだよねー」
朱梛「ああ、どうぞ」
朱梛(急にびっくりしたなぁ)
耀哉「ありがとう。朱梛――、」

朱梛の口元にかかっていた髪の毛を指で掬う。


朱梛「っ!」※顔が赤くなる
耀哉「髪食べてる」※ちょっと意地悪な笑顔
朱梛「た、食べてないっ」
朱梛(さりげなくボディタッチ!! いや違う、髪の毛避けてくれただけだから! これだけでキュンとするな、私!)
中原「……」


○数時間後
先輩「この後雨降りそうだから早めに撤収しまーす」
『はーい』

朱梛(ほんとだ、雲行きが怪しい)
中原「一葉さん、片付け手伝うよ」
朱梛「ありがとう」
中原「あのさ、さっき話しかけてきた人って一葉さんの彼氏?」
朱梛「!?」

思わず真っ赤になる朱梛。

朱梛「ちっ違うよ! ただの幼なじみ! てか兄代わり? みたいな」
中原「兄代わり?」
朱梛「お兄ちゃんみたいな存在ってこと。最近は過保護すぎるんだけどね」
中原「ふーん。彼氏じゃないんだ?」
朱梛「彼氏なんていないよ。いたら合コンなんて行かないって」
中原「……じゃあ、連絡先聞いてもいい?」
朱梛「えっ」
中原「一葉さんともっと話してみたいんだけど」
朱梛「ぜっ是非!!」

連絡先を交換する二人。

朱梛(うわあ……! 男の子の連絡先GETしちゃった!)
中原「一葉さんって映画とか観る?」
朱梛「観るよ! 好き!」
中原「この映画観た?」
朱梛「あ、それ気になってるけどまだ観れてないや」
中原「じゃあ、今度――」

突然スコールのような雨が降り出す。

朱梛「えっ何これ!?」
中原「急に降り始めたな! 屋根のあるところへ行こう」
朱梛「うん!」

びしょ濡れになりながら屋根のある方へ走り出す二人。
ピカッと空が光り、ゴロゴロという音が鳴る。

中原「うわっ、雷もかよ! 一葉さん、急ごう。……一葉さん?」

腰が抜けて震えている朱梛。

朱梛(あ……、どうしよう。雷は昔から苦手なのに)

〜回想〜

朱梛モノローグ:
「お母さんが夜勤の仕事で夜一人の時、外がものすごい雷雨だった。しかも家の近くで轟音が何度も響いていて、一人で怖くて心細くて、あの時のことを思い出してしまうから今でも雷は怖い」

布団を頭から被って震えながら辛抱している小学生の朱梛。

〜回想終了〜

朱梛「……っ」※ぎゅっと両手を握りしめる
中原「一葉さ……」

中原が駆け寄るより先に雨の中に飛び込む耀哉。
自分のシャツを脱いで朱梛に頭から被せる。

耀哉「大丈夫だよ、朱梛」
朱梛「耀哉くん……」
耀哉「俺がついてるでしょ」※ニコッと

朱梛モノローグ:
「そうだ、私が一人で怖がってるといつも耀哉くんが傍にいてくれたんだ」

耀哉「立てる?」
朱梛「う、うん」

ピシャーン!という雷鳴。
思わず耀哉の腕を掴む朱梛。

耀哉「やっぱり抱っこしようか?」
朱梛「一人で歩けるよっ」

手を繋いで戻る耀哉と朱梛。
その様子を見つめている中原。

朱梛「あの、ごめん耀哉くん」
耀哉「ん?」
朱梛「よろけた時に足と手を擦っちゃったみたいで」

腕と膝に擦り傷を負ってしまった朱梛。

耀哉「おんぶするよ!」

すぐに背中を差し出す耀哉。

朱梛「そこまでじゃない! 絆創膏持ってる? って聞きたかっただけ!」
耀哉「もちろんあるよ」


○耀哉の車
車の中に置いてあったバッグの中から絆創膏を取り出し、朱梛に貼ってあげる耀哉。

朱梛「ありがとう。耀哉くんっていつも絆創膏持ってるよね」
耀哉「朱梛がいつ怪我してもいいようにね」
朱梛「……私って、やっぱり子どもっぽい?」

拗ねた表情になる朱梛。

朱梛「未だに雷怖かったり怪我したり、耀哉くんにとって私って子ども?」
朱梛(……あ、やばい。ちょっと泣きそう)
耀哉「前にも言ったけど子ども扱いなんかしてないよ」
朱梛「嘘だよ!」
耀哉「本当だって。俺は朱梛のことが大事だから心配なんだよ」
朱梛「え……?」
耀哉「朱梛は大切な女の子だから」

真剣な耀哉の表情。

朱梛「耀哉くん……」

朱梛モノローグ:
「ダメだよ、そんなこと言われたら卒業なんて絶対できないじゃない。
やっぱり私は、耀哉くんのことが好き――……」


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