今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~
(結婚かぁ。好きな人ができて自然にそういう気持ちになれたら……とは思うけど、私にそんな日が来るとも思えないのよね)

恋愛は芽衣子にとって一番の苦手分野だ。そもそも乙女ゲーム好きを受け入れてくれる男性という時点で候補がガクンと減ってしまいそうな気もするし。

(なによりも、今は許される時間とお金はすべてルイさんに使いたい! 推しは推せるうちに推せって言うし)

恋愛も結婚も、芽衣子にとってはゲーム以上に遠い世界の出来事だった。

それから二週間ほど経った金曜日のこと。

雪雅と芽衣子の乗る社用車がナツメ開発の本社ビルの前で停まる。取引先での会議を終え戻ってきたところだ。

役員専用の高級車からおりると、雪雅は芽衣子を気遣った。

「すまない、ちょっと遅くなってしまったな」
「いいえ。私より社長のほうが……長時間の会議、お疲れさまでした」

時刻は夜八時過ぎ、ふたりの頭上には星のない都会の空が広がっている。夕方からスタートした会議は議論がずいぶん紛糾し、この時間になってしまった。

雪雅は会社までは自分の車で通勤しているので、このあとは地下の駐車場に向かうのだろう。芽衣子は電車通勤なので目的地は駅だ。

彼はふっとほほ笑みながら言う。

「車で送ろうか?と言いたいところだが……昨今の風潮だとセクハラで訴えられるか。気をつけて帰れよ」
「ありがとうございます。あ、社長。明日のご予定の件で一点だけ」

別れる前に連絡事項を伝えておこうとしたのだが、そこで芽衣子のスマホが鳴り出す。マナーモードにしていたけれど、辺りが静かだったので振動音が意外にも大きく響く。
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