新婚旅行江戸日和
「せっかくだし、クッキーも出しちゃおうかな〜」

クッキーとコーヒーを二人で楽しむ。幸せな時間……だと思う。うん。私はちゃんと幸せ。

「ねぇ、茜」

「何?」

翠さんがマグカップを置いて言う。

「今から新婚旅行、行かない?」

「えっ!?」

私は驚いてマグカップを落としそうになった。新婚旅行なんて行けるはずがない。だって今は、近場に遊びに行くことすら白い目で見られるんだから。

「新婚旅行は感染症が収まるまで行けないでしょ?」

「そうだね。だけど、感染症のない過去の世界だったら?」

「えっ?」

翠さんの言葉の意味がわからず首を傾げる。翠さんは私の手を引いた。

「こっち来て」

連れて行かれたのは地下室。一度も入ったことのない場所だ。たくさんの工具が並ぶ中、地下室の中央に卵型の機械みたいなものがある。

「翠さん、これ何?」

「タイムマシンだよ。今からこれに乗って新婚旅行へ行こう。江戸時代にしようか」
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