敵将の寵姫 ~結びの夜に咲く恋~
第一部 人質の姫、敵の城へ
北国の春は遅い。特に今年の春は、例年になく冷え込んだ。
そんな北国の白露城(しらつゆじょう)にも、ようやく春が訪れた頃――その柔らかな陽光とともに、戦火の影が落ちた。
「東国の黒田景虎が、軍を動かしたと。」
家臣の言葉に、父・白河宗直(しらかわ・むねなお)は眉をひそめた。
「なに?この北国を我がものにする気か……」
父は代々、白露城の主として、雪深いこの地を治めてきた。誇り高く、民を何よりも大切にする人。だからこそ、私は父を尊敬している。
だが、時代は今――戦国。力ある者が、正義を名乗る時代。
「黒田景虎……」
私はその名を口の中で転がした。
冷酷非情、情け容赦なし。けれど民を守る姿勢には信念があり、数多の国を落としながらも民を苦しめないという噂もある。
それでも、敵には違いない。
そして、それが私にどんな運命をもたらすのか、このときの私はまだ知る由もなかった。
そんな北国の白露城(しらつゆじょう)にも、ようやく春が訪れた頃――その柔らかな陽光とともに、戦火の影が落ちた。
「東国の黒田景虎が、軍を動かしたと。」
家臣の言葉に、父・白河宗直(しらかわ・むねなお)は眉をひそめた。
「なに?この北国を我がものにする気か……」
父は代々、白露城の主として、雪深いこの地を治めてきた。誇り高く、民を何よりも大切にする人。だからこそ、私は父を尊敬している。
だが、時代は今――戦国。力ある者が、正義を名乗る時代。
「黒田景虎……」
私はその名を口の中で転がした。
冷酷非情、情け容赦なし。けれど民を守る姿勢には信念があり、数多の国を落としながらも民を苦しめないという噂もある。
それでも、敵には違いない。
そして、それが私にどんな運命をもたらすのか、このときの私はまだ知る由もなかった。
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