契約母体~3000万で買われた恋~

第1章 恋のはじまりは、禁じられていた

派遣社員である私は、常に仕事に飢えていた。努力したところで、どうせ社員にはなれない――そんな諦めが、いつの間にか心に巣食っていた。

「里村さん。」

ふいに名前を呼ばれて振り返ると、そこには課長の真壁慎一さんがいた。

スーツの襟元から覗く淡いブルーのシャツ、整った眼差し。

私の胸が、わずかに高鳴る。

「はい」

「この書類、お願いできるかな?」

差し出されたのは、どう見ても厄介そうな内容。

ほかの社員なら躊躇するようなものだった。でも……彼の頼みなら断れない。

「大丈夫ですよ。」

笑顔で答えると、真壁課長もわずかに微笑んだ。

その笑顔を見たくて、私はきっと、頑張ってしまうのだ。

それがどんなに報われないとしても――。
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