契約母体~3000万で買われた恋~
でも、厄介な仕事はやっぱり厄介だった。

表計算に細かい関数の組み合わせ、しまいには折れ線グラフの作成まで。

「……あーあ、面倒くさいな。」

つい独り言が漏れる。

それでも、これが完成すれば真壁課長の役に立てる――その思いだけで、キーボードを叩き続けた。

気づけば、オフィスには私の他にほとんど人がいない。

画面の隅で時刻を確認し、息を呑んだ。

「え……もう十九時?」

派遣社員は、上司の指示がなければ残業できない決まりだ。うっかり夢中になりすぎた。

慌てて席を立ち、課長席の様子をうかがう。まだ真壁課長は、自席でパソコンに向かっていた。

私は恐る恐る声をかける。

「あの……すみません。気づいたら時間、過ぎてしまっていて……」

その瞬間、真壁課長がふとこちらを見て、優しい笑みを浮かべた。
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