契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
私は、そっと盃を手に取った。

酒がゆらりと揺れて、細かな波を立てる。

――たった三度、盃を交わすだけで、人生が変わってしまうの?

震える手で、そっと口元へ運ぼうとした瞬間――

「飲めないか」

低く静かな声が、すぐそばから響いた。

見ると、圭一郎さんが私の手をそっと包んでいた。

その手は、乱暴でも、冷たくもなかった。

ただ、静かに、私の震えを止めようとしているかのように。

私は、そっと息を呑んだ。

ああ、もう戻れないんだ。

この盃を交わしたら――私は、彼の妻になる。

それでも、私は彼の手に導かれるように、そっと盃を口に運んだ。

微かな酒の香りとともに、誓いの液が喉を落ちていく。

心が、じんと熱くなった。

そして、式はそのまま祝宴の席へと移っていった。

豪華な漆塗りの膳に並ぶ料理。

花で飾られた部屋には、親戚や関係者たちが華やかな着物や紋付で集まり、祝いの言葉が飛び交っていた。
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