契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
「来たか。」

短く、それだけ。

私は深く一礼した。

彼は頷いたあと、そっと右手を差し出した。

驚いた。

儀礼としての動作かもしれない。けれど――

その手は、思っていたよりも、温かそうに見えた。

私も、その手を取った。

ほんの一瞬、ためらいかけたけれど――それが今の私の、唯一の進む道だったから。

圭一郎さんの手は、想像していたよりも大きくて、温かかった。

ただの形式かもしれない。けれど、少しだけ、胸が締めつけられる。

彼に連れられて、私は南條家の屋敷の中へと足を踏み入れた。

そこには、格式と威厳を感じさせる調度の数々。

大理石の床、金襴の屏風、そして天井に揺れる銀細工の灯籠――すべてが、私のいた世界とは違っていた。

和室に通された私たちの前には、すでに三々九度の杯と酒が用意されていた。

私の鼓動が早まる。

「では、三々九度を。」

進行役が声を掛けた。
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