紳士な弁護士と偽りデートから
「だからって、ピックは危ないわ!!」
あかりは訴えると、部屋のチャイムが鳴った。
よかった! 助かった!
更にチャイムが鳴る。
あかりのスマホから電話が鳴ると、その電話に出る。
《橘さん、大丈夫ですか?!》
坪平海都だ。
スピーカーにしたので、筒抜けだ。
「なんとか」
《ボーイさんと警察官がいますから、すぐに開けて貰えます》
「お願いします!」
その状況を聞いた華絵は、ピックを置いてある場所へ戻した。
「おいおい、大袈裟だって!」
青ざめた匠が、焦って言う。
「あなたは大袈裟に捉えるかもしれないけど、こっちは怖かったのよ!!」
ドアが開いて、ボーイと、もう一人の男性が乗り込んできた。
一人の男性は警察のバッチを見せた。私服の刑事さんだ。
「脅迫罪として、起訴する事が出来ますよ」
「な、なんで!!」
「証拠はこちらにもあります。橘さんの証拠を揉み消したって無駄です」
冷静に海都が言う。
「お、俺はただ......」
「これ以上女性を苦しめないで!」
あかりは言った。
匠は何も言えなくなり、
華絵はピックをまた取り出して、匠に振り上げようとした。
「う、うぁあああっ!!」
匠は悲鳴を上げ、腰を抜かして、尻餅をついた。その姿がなんとも無様で。
だが、刑事が華絵の行動を素早く止めた。
「いくらなんでも、ふりになる事はやめなさい」
刑事が声を上げた。
「どうしてよ!! わたしの物にならなければ、会えなくなっちゃうのに!」
「他にいい人がいるじゃない!」
「あなたに何が分かるの!」
「そんな素行の悪くて、いつまでも愛人のままでいいのってことよ!」
「だ、だって愛してるって......」
「それはどうせ行為している時だけじゃない!」
華絵はその言葉に詰まった。
「海都......、もう、大丈夫だな」
刑事は、海都の肩を軽く叩いて、部屋から出て行く。
二人は知り合いなのだろうか。親しみを感じられた。
刑事のほうも海都と引けを感じずにかっこいい。類は友を呼ぶ? なんて、あかりは思えた。
「逮捕されない?」
あかりは心配して、海都に訊ねた。
「大丈夫。一段落出来たから、出て行ったんだ」
「俺は......、あかりが羨ましかっただけなんだ......。街でたまたまあかりに会った時、俺がいなくても、楽しそうにショッピングウィンドウをしていたから......。俺とあんな風になっても、平気なんだって、がっかりして......」
「あっ......」
あかりは悲しそうな声を出した。確かに匠とどうでもよくなったのは、あかり自身だ。
あの頃の匠は、パーフェクトに近いくらい。なのにどうしてかしら。
あかりはどうして、自然消滅したのか分からない。
ちゃんとお別れしていればよかったのかしら。あかりはそう思うと、がっかりした。
そして、海都が優しくあかりを見守っていたのを、気付けなかった。
* * *
三隅華絵が匠の領収書を工作していた、と、海都のお父様が教えてくれた。
「自ら、教えてくれたんだ。そして、辞表を出したよ」
「そうですか......」
「藤沢匠の件はね、また、他の会社に行くことになったんだ」
「はぁ......」
「.........奥様が妊娠していたらしくて、これを機会に女ぐせを治すそうだよ」
「どうして三隅さんが、辞めなければ、ならないのですか?」
「橘さん......」
「はぁ......」
「もう終わったんだ。それ以上、考え込まなくていいよ」
そう言われても、あかりは暗い顔をした。
「困ったお嬢さんだ。次から次へと......」
「いえ、そうではないんです」
「あぁ! それは、わたしではなくて、息子に話したらいいんじゃないのかね」
周平はニコリとした。
「そ、そんな!」
あかりは慌てた。
「心配していたよ」
そっか。それがいけないのか。まぁいいやで、すましてはいけないんだ。
だから、匠が、自暴自棄になってしまった。
「連絡します」
「うん、喜ぶよ」
あかりは微笑んだ。
あかりは訴えると、部屋のチャイムが鳴った。
よかった! 助かった!
更にチャイムが鳴る。
あかりのスマホから電話が鳴ると、その電話に出る。
《橘さん、大丈夫ですか?!》
坪平海都だ。
スピーカーにしたので、筒抜けだ。
「なんとか」
《ボーイさんと警察官がいますから、すぐに開けて貰えます》
「お願いします!」
その状況を聞いた華絵は、ピックを置いてある場所へ戻した。
「おいおい、大袈裟だって!」
青ざめた匠が、焦って言う。
「あなたは大袈裟に捉えるかもしれないけど、こっちは怖かったのよ!!」
ドアが開いて、ボーイと、もう一人の男性が乗り込んできた。
一人の男性は警察のバッチを見せた。私服の刑事さんだ。
「脅迫罪として、起訴する事が出来ますよ」
「な、なんで!!」
「証拠はこちらにもあります。橘さんの証拠を揉み消したって無駄です」
冷静に海都が言う。
「お、俺はただ......」
「これ以上女性を苦しめないで!」
あかりは言った。
匠は何も言えなくなり、
華絵はピックをまた取り出して、匠に振り上げようとした。
「う、うぁあああっ!!」
匠は悲鳴を上げ、腰を抜かして、尻餅をついた。その姿がなんとも無様で。
だが、刑事が華絵の行動を素早く止めた。
「いくらなんでも、ふりになる事はやめなさい」
刑事が声を上げた。
「どうしてよ!! わたしの物にならなければ、会えなくなっちゃうのに!」
「他にいい人がいるじゃない!」
「あなたに何が分かるの!」
「そんな素行の悪くて、いつまでも愛人のままでいいのってことよ!」
「だ、だって愛してるって......」
「それはどうせ行為している時だけじゃない!」
華絵はその言葉に詰まった。
「海都......、もう、大丈夫だな」
刑事は、海都の肩を軽く叩いて、部屋から出て行く。
二人は知り合いなのだろうか。親しみを感じられた。
刑事のほうも海都と引けを感じずにかっこいい。類は友を呼ぶ? なんて、あかりは思えた。
「逮捕されない?」
あかりは心配して、海都に訊ねた。
「大丈夫。一段落出来たから、出て行ったんだ」
「俺は......、あかりが羨ましかっただけなんだ......。街でたまたまあかりに会った時、俺がいなくても、楽しそうにショッピングウィンドウをしていたから......。俺とあんな風になっても、平気なんだって、がっかりして......」
「あっ......」
あかりは悲しそうな声を出した。確かに匠とどうでもよくなったのは、あかり自身だ。
あの頃の匠は、パーフェクトに近いくらい。なのにどうしてかしら。
あかりはどうして、自然消滅したのか分からない。
ちゃんとお別れしていればよかったのかしら。あかりはそう思うと、がっかりした。
そして、海都が優しくあかりを見守っていたのを、気付けなかった。
* * *
三隅華絵が匠の領収書を工作していた、と、海都のお父様が教えてくれた。
「自ら、教えてくれたんだ。そして、辞表を出したよ」
「そうですか......」
「藤沢匠の件はね、また、他の会社に行くことになったんだ」
「はぁ......」
「.........奥様が妊娠していたらしくて、これを機会に女ぐせを治すそうだよ」
「どうして三隅さんが、辞めなければ、ならないのですか?」
「橘さん......」
「はぁ......」
「もう終わったんだ。それ以上、考え込まなくていいよ」
そう言われても、あかりは暗い顔をした。
「困ったお嬢さんだ。次から次へと......」
「いえ、そうではないんです」
「あぁ! それは、わたしではなくて、息子に話したらいいんじゃないのかね」
周平はニコリとした。
「そ、そんな!」
あかりは慌てた。
「心配していたよ」
そっか。それがいけないのか。まぁいいやで、すましてはいけないんだ。
だから、匠が、自暴自棄になってしまった。
「連絡します」
「うん、喜ぶよ」
あかりは微笑んだ。