紳士な弁護士と偽りデートから

偽りのデートから本物に。

 LINEを入れると、すぐに海都から連絡があった。

《あのラグジュアリーなホテルのカフェで待っています》

 という丁寧な返信が来た。

 カフェというのが、真面目で海都らしい。あかりはLINEをみて、微笑ましくなった。 

 17時であかりは上がり、すぐにあの高級ホテルに向かった。
 高級ホテルだけあり、高級感漂うお洒落なカフェだ。
 窓際に腰掛けている。冬はイルミネーションが綺麗だと思われる。
 海都はあかりを見つけると、手を上げた。
「冬は綺麗なんでしょうね」
 あかりは窓からの風景を眺めて、わくわくしながら言った。
「そうですね。よかったら、一緒にどうです?」
 あかりは海都の自然な会話に、
「ぜひ!」
 と、答えた。

 素直なあかりの受け方に、海都は思わず微笑む。あざとさのない素直さが、危なっかしい感も否めない。
 だから元カレと一夜を過ごしたあとに、大変な目にも合ったが。

 あかりはスタッフに、コーヒーを頼んだ。
「あれからどうしたのかと、気になってて。LINEが来た時は、とても嬉しかったです」
 海都もあかりの真似をして、素直に話してみた。
「そうでしたか」
 あかりの頬が少し赤らむ。 
「よく分からなかったけど、あの時はごめんなさい」
 あかりは【北欧のそよ風】での出来事を思い出し、そう言った。
「いいえ。僕がつい感情的になってしまったもので......」
「差し支えなければ、何かあったのですか?」
 海都は悲しい顔をして、
「いいえ、過去の出来事ですよ」
 と、話しただけだった。

 知り合って間もないのだ。あかりはこれ以上、深堀りするのをやめた。
 話してくれる時があるのか、それとも、ずっと心に閉まったままか。

「......たまにこうして、会ったりしてくれませんか?」
 あかりは素直に話した。
 海都は驚いた表情をしたものの、
「ええ、喜んで」
 と、言った。

 デートする回数が増えて、その出来事を話してくれるといいな、なんて、あかりはそう感じた。

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