紳士な弁護士と偽りデートから

海都の過去

「高校のクラスメイトが虐められるようになってね」
「虐め?」
「ごめん、こんな話」
 あかりは慌てて首を振る。
「むしろ話して下さい」
 海都は寂しそうに、微笑んだ。
「最初はからかいから始まり、クラスメイトも、声を上げていたんだけど、酷くなってね」
「酷い、ですね」
「不登校にまで追いやられ、引っ越ししてしまったんだ」
「そこまで追いやられたんですか?」
「うん。俺はどうすることも出来なくてね......。友達だったんだけど、何にも出来なかった......」

「.........」
 
 あかりは何も言えなくなった。

「一人でも平気だったけどね、苛められるのが、怖かった。必用に追いかけてくるし、ボロボロになるまで、目の敵にする」

「何をそんなにまで追い込むのかしら」

「俺でも分からないよ」

「......よかった」

「ん?」

「だって、もし苛める側が分かっていたら、ちょっと引いたかも......」
 
 海都は苦笑した。

「どこで当事者になるか、分からないよ。あかりだって、そのグループに入ったら......」

 あかりは何も言えなくなった。そもそもグループがよく分からないからだ。

「......それで、弁護士さんになったの?」
「どうだろうね、そのクラスメイトにとっては迷惑だろうし、覚えてもないだろうな」
「そっか。でも、それがきっかけで、弁護士になろうって思ったんでしょ?」
「うん。少なくとも、裏切らないで、味方になれるからね」

 かっこいいな、なんて、あかりは思った。

「もし、わたしが困った事が起こったら、弁護してくれる?」
「もちろん、あかりを知ったからにはね。あのホテルでの件も、すごく心配したんだ」
「ありがとう。なんか嬉しい!」
 素直に喜ぶのは名前だけあり、単に明るいのだ。

「やはり、わたしの専属弁護士さんだわ」

「あ、専属で思い出したけど、あのホテルに行ってみない? イルミネーションは、まだ早いかな?」
「いいわね! ちょっと見てみたいな。あのホテル、行くだけでも胸が踊るし!」
「決まりだ」
「歩いて行こうよ」
「そうだな。楽しいし。あかりは疲れてない?」
「大丈夫だよ」
 あかりは微笑んだ。


 30分ほど歩くと、そのラグジュアリーなホテルの近くまで行った。
 照明玄関のところに、大きなもみの木を、数人の照明スタッフが飾り付けをしていた。
「あー、まだ早かったね」
 海都は残念そうだった。

 あかりは主任っぽい40代の女性に、
「このクリスマスツリー、いつ点灯されますか?」
 と、聞いてみると、40代の女性は、ニコニコしながら、
「今週の土曜日の17時からやりますよ。マッピングショーもあって、楽しめると思います」
「マッピングショーなんて凄いな」
 海都はわくわくしながら言った。
「金曜日の夜と、翌日は会えるのね」
「そうゆうことになるね」
 海都は驚いて、目を丸くした。 
 あかりがぐいぐい引っ張ってくるのに、海都は何も違和感なく答えて、嬉しかった。

 気にしたことだって、忘れるだろう、と、海都は願った。
 
 
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