紳士な弁護士と偽りデートから
咲哉の事情
あかりは咲哉の後ろへ着いて行き、ビルの入り口に出ると、黒いベンツが止まっていた。
見た目、50代の運転手らしき人がお辞儀をして、
「お待ちしておりました。咲哉坊っちゃま」
と、お辞儀をした。
あかりは目を丸くした。そもそもベンツだし、この運転手、咲哉の事を【坊っちゃま】呼ばわりだ。ほんとはこの人、どんな人なの?! なんて思い始める。
「柏木、このビルから来たってことは、内緒にしとけよ」
「はい。まぁ、他の人に見られたら、わたしはどうしようもございませんが」
柏木という男性は、そう線引きをした。
「......それはしょーがないけど」
二人の会話に、なんだかもやもやするあかりだ。このビルは、探偵事務所が入っている。
身分差を気にしているのかしら? 【ぼっちゃま】、なんて、言われるくらいだ。
それにしても、漆山さんは何者なのだろう?
カタギではないと思うが......。疑問の多い人になったわ。あかりは気になり始めた。
行ってみたら分かるかも知れないという欲望が、あかりには勝ってしまい、海都にLINEするのを忘れてしまった。
車内で咲哉は、
「まず第一」
と、突然始まった。あかりは慌ててハンドバックから、100均のメモ帳を取り出した。
「はい!」
「現場に行ったら空気を読むこと」
「空気ですね!」
あかりはメモる。
「第二」
「はい!」
「ひとまず、二つ返事」
「......二つ返事? はいはい言ってらればいいってことですか?」
「うっ、そ、そう」
「まあ、臨機応変ですね」
「そうすると現場は大変、ややこしくなるから」
「あー......」
あかりは首を傾げた。
「お飾りでいろと?」
「そ、それでよし」
「探偵ってそんなものですか?」
「そうだよ。最初のうちはね。俺もそうだった」
咲哉は微笑んだ。まるで、懐かしむような微笑。
「張り込みだけじゃないのですねぇ」
「それもあるけどねぇ」
「でも、頑張ります! 探偵事務所に働き出して、初の現場ですから!」
「その意気込み、最高だよ」
ミラーから二人を覗き、やれやれという表情をする男性。
「遅くなったけど、彼は柏木と言ってね、執事なんだ」
「えっ?! まさか執事?! 小説やドラマに出てくるだけかと思いきや、ほんとうにいるんですね」
「初めまして、以後お見知りおきを」
柏木は丁寧に頭を下げた。
あかりも丁寧に微笑みながら、頭を下げる。
国道の木々が、イルミネーションで光り輝いている中を車は通る。
「国道はもうイルミネーションですねぇ」
あかりはウキウキしながら言った。
「イルミネーション、好きなの?」
咲哉は聞いてきた。
「はい!」
「その......、今日、一緒に食事するやつと見れるといいね」
「そうですね。多分、大丈夫です!」
咲哉は自信のあるあかりを見て、安心した。
「ごめんね、すぐ終わらすから」
横柄な態度の咲哉だったが、柔らかくなった。あの時はよほど切羽詰まっていたのだろう。
ベンツは明日ツリーが点灯式という、ラグジュアリーなホテルに着いた。あ、ここ。
口には出さなかった。何だかんだここのホテルに、縁があるんだ、と、あかりは思った。
見た目、50代の運転手らしき人がお辞儀をして、
「お待ちしておりました。咲哉坊っちゃま」
と、お辞儀をした。
あかりは目を丸くした。そもそもベンツだし、この運転手、咲哉の事を【坊っちゃま】呼ばわりだ。ほんとはこの人、どんな人なの?! なんて思い始める。
「柏木、このビルから来たってことは、内緒にしとけよ」
「はい。まぁ、他の人に見られたら、わたしはどうしようもございませんが」
柏木という男性は、そう線引きをした。
「......それはしょーがないけど」
二人の会話に、なんだかもやもやするあかりだ。このビルは、探偵事務所が入っている。
身分差を気にしているのかしら? 【ぼっちゃま】、なんて、言われるくらいだ。
それにしても、漆山さんは何者なのだろう?
カタギではないと思うが......。疑問の多い人になったわ。あかりは気になり始めた。
行ってみたら分かるかも知れないという欲望が、あかりには勝ってしまい、海都にLINEするのを忘れてしまった。
車内で咲哉は、
「まず第一」
と、突然始まった。あかりは慌ててハンドバックから、100均のメモ帳を取り出した。
「はい!」
「現場に行ったら空気を読むこと」
「空気ですね!」
あかりはメモる。
「第二」
「はい!」
「ひとまず、二つ返事」
「......二つ返事? はいはい言ってらればいいってことですか?」
「うっ、そ、そう」
「まあ、臨機応変ですね」
「そうすると現場は大変、ややこしくなるから」
「あー......」
あかりは首を傾げた。
「お飾りでいろと?」
「そ、それでよし」
「探偵ってそんなものですか?」
「そうだよ。最初のうちはね。俺もそうだった」
咲哉は微笑んだ。まるで、懐かしむような微笑。
「張り込みだけじゃないのですねぇ」
「それもあるけどねぇ」
「でも、頑張ります! 探偵事務所に働き出して、初の現場ですから!」
「その意気込み、最高だよ」
ミラーから二人を覗き、やれやれという表情をする男性。
「遅くなったけど、彼は柏木と言ってね、執事なんだ」
「えっ?! まさか執事?! 小説やドラマに出てくるだけかと思いきや、ほんとうにいるんですね」
「初めまして、以後お見知りおきを」
柏木は丁寧に頭を下げた。
あかりも丁寧に微笑みながら、頭を下げる。
国道の木々が、イルミネーションで光り輝いている中を車は通る。
「国道はもうイルミネーションですねぇ」
あかりはウキウキしながら言った。
「イルミネーション、好きなの?」
咲哉は聞いてきた。
「はい!」
「その......、今日、一緒に食事するやつと見れるといいね」
「そうですね。多分、大丈夫です!」
咲哉は自信のあるあかりを見て、安心した。
「ごめんね、すぐ終わらすから」
横柄な態度の咲哉だったが、柔らかくなった。あの時はよほど切羽詰まっていたのだろう。
ベンツは明日ツリーが点灯式という、ラグジュアリーなホテルに着いた。あ、ここ。
口には出さなかった。何だかんだここのホテルに、縁があるんだ、と、あかりは思った。