紳士な弁護士と偽りデートから

探偵のように!

 あかりは早朝、会社に着いてからパソコンを開いた。経理しているところは名前が記されている。
 それをコピーしようとしたが、あかりは我に返る。まって......、これって違法かしら? 犯罪じゃない? 
 でも、でも......。あかりは悩んだ。もしもの時は会社を辞めたらいい。匠とだらだら進行するのは無理だ。

「人の記載を見て、何してるの?」
 匠の声に驚いて、慌ててパソコンを閉じる。匠はニタニタした。
「た、匠こそ何よ! 人を脅しておいて!!」
 奥様や三隅さんを騙すなんてサイテイ! と、言いたくなった。
 
 パンプスの音が響いて来る。

 た、助かった!

 匠も素知らぬ振りをした。ドアが開くと、その人は、三隅だった。
「おはようございます」
 三隅は声を掛ける。
「営業の方がどうして経理部へ?」
 三隅は怪しい口調に、
「領収書の件で来ただけですよ」
 匠は白々しく言った。
「領収書、あったら預かります」
 三隅はニコリとして、匠から領収書を受け取る。

 見たい! 昨日の高級ホテルかしら?! 領収書、複数あるから分からないし、なんとか手に入れたいけれど...... 。
 あかりは悶々とした。

 少し考えて、
「あら? 三隅さん、化粧崩れしているわ」
「ほんと? トイレに行ってくるわ」
「行ってらっしゃい」
 三隅は領収書を置いて、トイレに行った。そうしたら、匠も、あかりに何も言わず、出て行く。
 
 ふう、危なかったわ。
 あかりはホッとして、領収書を確認すると、昨日のホテルの領収書が出てきた。あかりは海都がやっていた時を思い出し、写真を取る。
 これで、匠が出張に行ってなければ、不正を働いているということになる。
 三隅さん、聡明な人なだけに、どうして? なんて、納得がいかないあかりだ。

 三隅さんは匠の素行なんて知らないだろう。奥様がいる事すら知らないのではないだろか。
 わたしはともかく、二人を悲しい思いをさせるなんて......。
 あかりは深い溜め息を吐いた。

 部屋から出て、廊下に出ると、匠と三隅さんがいちゃいちゃしているのを目にした。二人は気付いていない。
 
 あかりはもう匠の素行を見ていられなくなり、その場から離れた。

 なんとか匠の素行を止めたい! と、思い始めるあかりだ。


「やめた方がいいですね」
 海都の即答。
 そう思い始めたあかりは早速、海都に連絡をして、夜、【北欧のそよ風】にて落ち合った。
「............」
 あかりの顔が引きつる。
 そして、コーヒーを一口飲み、
「どうしてですか?!」
 と、声を上げた。
「悪質な人でしたら、逆恨みされるだけですよ」
「それじゃあ、黙って見てろと?」
 海都はあかりの言葉に、深い溜め息を吐いた。
「坪平さん、弁護士じゃないですか。なら悪質な人を法に裁いて下さい」
「証拠さえあれば、助けるつもりですよ」
「あら......」
「だけど、悪質な人ほど、賢いんです。証拠なんて残さない」
「証拠......」
 あかりは目を剥く。スマホを取り出して、海都にLINEで、例の領収書を送る。
「これ、証拠ですよね」
 あかりは、うきうきし始めた。
「......あ......」
 海都は溜め息をつき、LINEで昨日の二人の激写を送った。
「えへへへ」
 笑顔が可愛いけれど、情熱的なのはどうしてだろう、と、海都は思う。人に対して情熱的だ。だから、過ちも犯してしまう。

「......わたしも思うけど、放っておいた方が身のためよ」
 茜音が呟く。
「所詮は他人同士の恋沙汰なのだし、一生恨まれるかもよ、あかり」
「弁護士の坪平さんが付いているもの」
「僕は橘さんの保護者ですか......?」
「いいえ、無料の専属弁護士です」
 無邪気に言うあかり。
「......無料」
 ポツリと呟く海都。
 茜音は何故か咳払い。
「随分と、軽く見られていますね......」
 そっちなんだ、と、茜音は思う。あかりはハッとして、
「す、すみません! そんな図々しくて!」
 なんて謝る。

 ヤルことは早いのに、そうゆうことは、疎いのねぇ、あかりは......。坪平さん、むずむずしてるじゃない、なんて茜音は思った。
「図々しく思われない方法はあります」
 海都の大胆発言に、茜音がおっ、と、思う。



 

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