影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「だが、あなた方親子が欲していたのは、“黒瀬”という名前と金。それを隠そうともしていなかった。そんな家と縁組みを結ぶ気はありません。」

「ふ、ふざけるな……!」

「ふざけているのは、そちらでしょう。」

今度は誠一郎さんがはっきりと言い返した。

「梨沙を蔑ろにして、俺を物のように扱った。そんな人々に、俺の人生を預ける気はありません。」

「……」

父は完全に言葉を失っていた。

そして――梨子はついに崩れ落ちた。

「いやよ……どうして……私のほうが、優れているのに……」

「優れている?」

お母様が静かに立ち上がった。

「愛を知らずに、妹を踏み台にしてきたあなたが?あなたのどこに“嫁”としての徳があるのか、教えてほしいわ。」

梨子の肩が震えた。

「――帰ってくれ、高嶋さん。」

黒瀬のお父様の最後の一言が、場を締めくくった。
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