影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「旦那様、どうぞ。」

いつの間にか背後に現れた志乃さんが、すっと小包を差し出した。

「これ、また……」

誠一郎さんが眉をひそめる。

「例のモノです。いくらでも調達しますから。」

「志乃さん、なぜそんなに持ってるんですか……?」

「子孫繁栄のためです。」

志乃さんは神妙な面持ちでそう言い残し、すたすたと部屋を去っていった。

「……なんなんだ、この家は。」

ぽつりと呟いた誠一郎さんの顔を見て、私は耐えきれず笑い出した。

「ふふっ、全部、誠一郎さんがその歳まで結婚しなかったからですよ。」

「俺のせいか……?」

「もちろんです。」

そう言って、私は彼の手を取った。

この家の人たちに、もうすっかり受け入れられている気がして。

なんだか胸が、ぽかぽかと温かくなる。

「この歳まで結婚しなかったのは、理由がある。」

真剣な声音に、私は身を固くした。

きっと――奈保さんのことだ。

忘れられない人がいたのなら、それでも構わない。
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