影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
過去は過去。私は“今”を大切にしたい。

「はい、ですよね……」

私は俯いたまま、そっと答える。

だけど、彼はふっと笑って私の顎を持ち上げた。

「それは……梨沙に出会う為だ。」

「えっ……?」

一瞬、意味が理解できなかった。

そして、きょとんとした私を見て、彼はさらに穏やかに微笑む。

「この歳まで独りだったのは、君を待つ為だったんだよ。」

胸が、ぎゅうっと音を立てて締め付けられる。

「……誠一郎さん。」

「たとえ過去に誰かがいたとしても、君を初めて見たあの日から、俺の未来は君のものになった。」

「……ずるいです。そんな言い方……」

「ずるくていい。君にだけは、本音でぶつかりたい。」

そして、彼はそっと私の手を握り、唇を寄せてきた。
< 115 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop