影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「……何ですか?」

誠一郎さんの声が、低く静かに返った。

「妾の娘ですから、男を満足させる技の一つや二つ、身についているでしょう?」

梨子は唇に笑みを浮かべながら、私を見下すように言った。

「妾の娘は所詮、男を魅惑するしか方法はありませんものね。愛なんて手に入らないくせに。」

私は震えていた。屈辱に、怒りに、そして――悲しみに。

その時だった。

「……ええ、」

誠一郎さんが、にっこりと笑った。

「すっかり梨沙に魅了されています。」

「えっ……?」

梨子の顔から、笑みが引いた。

「俺は梨沙を――毎晩、求めた。」

静かな声だったが、部屋中に響いた。

「それは……愛欲の技とか、そんなものじゃない。梨沙の可愛らしさ、いじらしさ、誠実さ……全てが、俺を惹きつけてやまなかった。」

「毎晩……?」

梨子の表情がひきつった。

「子種も、たくさん出した。おそらく――近いうちに、梨沙は俺の子を宿すだろう。」
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