影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「もう、梨子さんが誠一郎を気に入ってないみたいに、梨沙さんが言うものだから……」

お母様は私を見て、どこか困ったように眉をひそめた。

その言葉に、梨子は涼しい顔で笑った。

「とんでもないわ。」

わざとらしく両手を胸に添え、芝居がかった声で言う。

「誠一郎さんは、仕事もできて、お顔立ちも整っていて――なにより、とてもお優しい。そんな素晴らしい方、嫌いになる理由なんてないもの。」

一瞬、部屋が静まり返った。

梨子の視線が、真っ直ぐ誠一郎さんを捉える。

「その素敵な愛情、これからは私がしっかりと受け継がせていただくわ。」

……ぞっとした。

その笑みは、まるで私の蜜月を切り裂く宣告だった。

嫌だった。

こんな人に――誠一郎さんを、渡したくなんてなかった。

そしてその矛先は、ついに誠一郎さんにも向けられた。

「どうでした? 梨沙の体は。」

――一瞬、空気が凍る。
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