影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
誠一郎さんの怒声が、部屋を貫いた。

「なっ……」

梨子は目を見開く。

「お前が“本妻”かどうかなんて、戸籍上の話だ。俺にとって“妻”は――愛する女だけだ。そしてそれは、梨沙だけだ!」

「私よ! あなたの妻はこの私よ!」

梨子が叫ぶ。けれどもその声には、もはや何の威厳もなかった。

「違う。」

誠一郎さんは、真っすぐに私の手を取った。

「この人が、俺のたった一人の妻だ。」

私の目に、熱いものがこみ上げた。

誠一郎さんの掌が、私のそれを包む。

「そこまで言うのなら――愛人に迎えればいいじゃない。」

梨子が冷たく笑いながら言った。

「えっ……?」

私は耳を疑った。

姉妹で、同じ人に抱かれるなんて――

「いいのよ。私は、正式な妻だもの。ただし……あなたが産んだ子供は、私が育てるけどね?」

笑っていた。

その口元には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。
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